先日、妻から離婚調停を起こされた夫からの法律相談を受けたのですが、申立ての理由が夫の暴言や暴力を原因とするものでした。夫からの相談は、もう暴言や暴力はしないから、関係を修復するようにして欲しいと内容でした。

 もし、妻が調停で夫が反省していることを受け入れて、関係を修復しても構わないと考えたとき、妻は調停を取り下げなければならないでしょうか?

 このような場合、もう夫が妻に暴言を吐いたり、暴力を振るったりしないという取り決めをして調停を成立させるのも一つの手段だと思います。

 調停が成立したからといって、このような取り決めを定めた調停調書に執行力はないため、強制的に夫に暴言を吐かせないようにしたり、暴力を振るわないようにさせることはできません。

 しかし、調停でこのような取り決めをすれば、夫にもう暴言を吐いたり、暴力を振るったりしてはいけないという心理的効果を与えることができるかもしれません。

 また、調停での取り決めが遵守されていない場合、妻の申し出により、家庭裁判所は、夫が暴言を吐いたり、暴力を振るったりしないよう勧告することができます(家事審判法15条の5)。

 このように取り決めをして調停を成立させれば、夫の暴言や暴力の抑止力にはなりそうです。まあ、今回は、暴言、暴力夫からの相談なので、このような取り決めをした調停を成立させない方がよいのですが、妻がなかなか関係修復に応じないような場合には、交渉の材料として、もう暴言を吐いたり、暴力を振るったりしないという取り決めをして調停を成立させるよう提案してみたいと思います。

弁護士 竹若暢彦