みなさん、調停や審判といった言葉を聞いたことがあるという人は多いと思いますが、どういった違いがあるかまでは知らないのではないでしょうか。今回は、それら、家事事件の具体的手続等のお話しをしてみようと思います。

 家庭内の事情や争いに関しては、傍聴人に見せても余り意味がないので、原則として非公開の手続で行われることになっています(家事審判規則6条)。その手続を家事審判法・家事審判規則が定めています。なお、離婚訴訟等人事訴訟については、公開を原則として、例外的に非公開にできるというスタンスをとっていますが(憲法82条1項、2項本文、人事訴訟法22条1項)、ひとまず「訴訟」に関する話は置いておきます。

 まず、審判とは、家事事件に関して、裁判官(審判官)が、当事者の提出資料や家事調査官の調査資料等に基づいて、決定を下す手続をいいます。

 他方、調停とは、裁判官(調停官)と男女二人の調停委員で構成される調停委員会が、当事者から交互に意見を聞いて、助言等を行うことにより、合意を成立させることを目的とした手続をいいます。

 いずれも、裁判所において行われる点、原則として代理人のみならず本人も出席しなければならない点(本人出頭主義 家事審判規則5条1項)、その内容で確定すれば確定判決同様の拘束力を持つ点(家事審判法21条1項、25条3項)等で共通しますが、上述したことからわかるように、審判は裁判官によってなされる判断であるのに対し、調停は、あくまで当事者の意思の合致がない限り、成立しえないものです。

 そして、家事審判法は、様々な家事事件を主に甲類事件と乙類事件に分類しています(家事審判法9条1項)。

 甲類事件とは、当事者間の紛争とは直接関係がないため、当事者の話し合いによる任意処分を想定できない類の事項を決める手続です。これは、調停申立が許されず、専ら審判だけが行われる事件です(家事審判法17条但書)。

 具体的には、子の氏の変更許可、名の変更許可、後見人の選任、養子縁組の許可等の事件です。こういった事項は、公益に関わるため、裁判所に後見的役割が期待されています。

 乙類事件とは、紛争性が高く、対立する当事者が想定されるため、当事者の話し合いによる解決可能性のある事項を決める手続です。これは、調停申立も審判申立もいずれの申立もできる事件です。当事者がどちらの申立をするかは自由ですが、裁判所で、その事案はまず当事者間で話し合うべきと判断されれば、審判申立をしても、調停に付される場合があります(家事審判法11条)。また、この事件について、調停申立がなされたものの、話し合いがまとまらなかった場合、自動的に審判手続に移行し、審判によって判断されることになります(家事審判法26条1項)。

 乙類事件の具体例は、婚姻費用の分担請求、養育費の請求、親権者の指定・変更請求、監護者の指定請求、財産分与請求等の事件が挙げられます。