専業主婦の方が夫や元夫に対して、婚姻費用や離婚後の養育費を請求する場合、専業主婦の方の基礎収入はどのように算定されるのでしょうか。
専業主婦の方については、就労歴や健康状態、子の年齢や健康状態など様々な事情を考慮した上で、潜在的な稼働能力が認められる場合には、賃金センサスのパート収入などを考慮して、基礎収入が算定されることがあります。
したがって、健康状態も良好でお子様の年齢も高く、働こうとすればいつでも働けるような場合には、専業主婦の方も一定の収入を得ていると仮定した上で、婚姻費用や養育費の算定を行うことがあります。
逆に言えば、本人の健康状態に問題があって就労が不可能な場合や、お子様の年齢が低く、育児や幼稚園・保育園の送迎が必要である場合などは、無職を前提に婚姻費用や養育費の算定を行うことが多いと思われます。
また、夫と別居して間もない場合などは、就職活動を行う時間的余裕もないでしょうから、そのことが考慮されることもあるようです。
たとえば、大阪高裁平成20年10月8日決定は、夫側の、相手方(専業主婦)は長男を幼稚園に通わせ、長女を保育園に預けていることから、就業可能であり、少なくとも年収125万円程度の潜在的稼働能力があるものとして扱うべきであるという主張に対して、
「潜在的稼働能力を判断するには、母親の就労歴や健康状態、子の年齢やその健康状態など諸般の事情を総合的に検討すべきところ、本件では、相手方は過去に就労歴はあるものの、婚姻してからは主婦専業であった者で、別居してからの期間は短いうえ、子らを幼稚園、保育園に預けるに至ったとはいえ、その送迎があり、子らの年齢が幼いこともあって、いつ病気、事故等の予測できない事態が発生するかも知れず、就職のための時間的余裕は必ずしも確保されているとはいい難く、現時点で相手方に稼働能力が存在することを前提とすべきとの抗告人の主張は採用できない」
と判断して、専業主婦の潜在的稼働能力を否定しました。