最近、パワースポットの流行りにのって、各地の神様に対する信仰心が芽生えている人がたくさんいると思います。にわか信者かもしれませんが、その信仰心はそれぞれの心の中にある限りは、誰にも迷惑をかけるものではないので、尊重しなければならないですよね。

 でも、この信仰心が過度に強くなってくると、夫婦間の亀裂の元になったりします。

 夫婦間の信仰の違いから離婚となった以下のような事案(東京地裁平成9年10月23日判決)があります。

 この事案では、夫は神道を信仰していたのに対し、妻はエホバの証人を信仰したうえ3人の子どももエホバの証人に入信させていました。妻がエホバの証人の信仰を続けたため、夫は妻が改心するのを期待して歩み寄りの姿勢を見せて妻との結婚生活を続けていましたが、妻は一向に信仰を変えようとしませんでした。そのため夫は妻に不信感を抱くようになり、離婚を考えるようになりました。約10年間の対立の後、夫婦は2年間の別居を経て、夫が離婚を申し立てるに至りました。

 この判決では、結論としては、妻の宗教活動は夫婦生活に現実に重大な支障をもたらしたものではないとしながらも、妻の信仰の強さと夫は婚姻生活を継続することは到底不可能と考えていること、対立が約10数年にもわたっていること、話し合いを続けたがそれでも夫婦関係を修復できず、一度は被告も離婚を了承したことなどから、今後も共同生活維持のための譲歩は期待できないとして夫婦関係の破綻の評価に至りました。

 上記の判例は、配偶者が新興宗教に入っているという事実だけでなく、その入信によって、夫婦関係が破綻したということが離婚理由になっています。

 日本では、新興宗教に入信している人をそれだけで敬遠する傾向がありますが、離婚という場面では、新興宗教への入信という事実のみが離婚理由となるのではなく、新興宗教への入信により夫婦関係の破綻に至ったということが離婚理由となるのです。