1 はじめに

 こんにちは、弁護士の平久です。今回は、離縁について取り上げます。日本では、昔から女性の子どもしかいない家が、後継ぎとして男性を家に迎えるということを主たる目的にした婿養子というものが存在しています。この婿養子というのは、法律的には、妻と婚姻し、さらに妻の親と養子縁組をすることです。夫婦関係が円満なときは問題ないのでしょうが、夫婦関係が破綻し、離婚することになった場合に、この養親子関係もそれに伴って終了させる(離縁)ことも多く、今回はこの点について検討します。

2 養子縁組の効果

 離縁の効果を考える前に、そもそも養子縁組によってどのような法律効果が発生するかを説明します。次の二つの効果が主たるものです。

⑴ 財産の相続権

 養子縁組によって、養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します(民法809条)。そして、被相続人の子は、第一順位の相続人であるため(民法887条1項)、養親が死亡したときには、養子は養親の財産(負債も含みますが)を相続します。

⑵ 養親の氏

 また、養子は、養親の氏を称します(民法810条本文)。ただし、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、養親の氏を称しなくても良いのですが(同条但書)、婿養子の場合、両者は一致すると思われます。

3 離縁の効果

⑴ 相続権の消滅

 離縁の効果については、2でご説明したことの裏返しになります。すなわち、養子と養親の法定血族関係が消滅しますので(民法729条)、養子に養親の財産の相続権がなくなります。

⑵ 復氏

 また、養子は、離縁によって縁組前の氏に復します(民法816条1項本文)。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、復氏しません(同項但書)。この他、養子縁組の日から7年を経過した後に離縁によって縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三カ月以内に届け出ることにより、離縁の際に称していた氏を称することができます(同条2項)。これは離婚の際の婚氏続称(民法767条2項)に対応した規定で、縁氏続称と呼ばれています。7年という期間の経過を要求しているのは、氏の変更のみを目的とした制度の濫用を防ぐ趣旨です。

4 考察

 婿養子となった夫が妻と離婚する場合、妻の親との養親子関係も解消するというのが一般的ではないかと思います。妻側からすれば、気持ちの面でも離縁して欲しいでしょうし、親の財産の相続権を消滅させるという実利的な面でも離縁を希望するでしょう。とすれば、婿養子となった夫にとっては、離縁に応じることが、離婚交渉で有利な条件を引き出すための重要なカードとなり得ます。そこで、こうした点も考慮して交渉に臨まれてはいかがでしょうか。

弁護士 平久 真