何回か前のブログで、婚約はどのような事情で成立するかについてお話をする予定であると申し上げていながら別のテーマが引き続いていましたので、今回はこのテーマについてお話をします。
婚約とは、将来婚姻することを約する契約であるということはすでにお話ししたとおりです。
婚約の成立
婚約の成立には、当事者の意思の合致があればよく、一定の儀式は必要ではありません。ですから、特に結納の取り交わしがなくても、婚約指輪を購入しなくても、婚約は成立しうるのです。また、民法上の婚姻年齢、つまり男性は18歳、女性は16歳に達していなくても、婚約は成立します。
裁判例では、結婚の申し込みをきっかけに、結婚式のための教会やホテルを訪れて結婚式の候補日の状況を調べてもらったり、予算の見積もりを出してもらったりしたこと、結婚指輪やウエディングドレスを購入したこと、結婚の挨拶のために両親と面会したこと等の事実関係から、婚約の成立を認めたものがあります(東京地裁判決平成19年1月19日)。
婚姻について合意が成立していたとは認められない事例
一方、前々回のブログにも紹介した裁判例ですが、それまで居住していたマンションを引き払って相手方に転居して同棲した上、互いの両親の公認を得たうえで家族ぐるみで付き合ったり、海外ウェディングの説明書を取り寄せたり、二人で歯科医院の開業準備をする等していたものの、相手方には妻子がいて離婚問題で悩んでいたという事例において、婚姻についての明確な合意が成立していたとは認められないとされています。もっとも、この事例における同棲関係は法的に保護されるべきであり、この同棲関係の破棄については不法行為が成立するとしています(東京地裁判決平成18年1月12日)。
一方に配偶者がいる場合、必ず婚約が成立しないというものではないとは考えられますが、重婚が認められていない以上、相手が離婚しなければ婚姻できないわけですから、婚約があったというには説得力がないということなのかもしれません。
婚約が無効になった判例
ちなみに、過去の判例では、配偶者があることを知って配偶者がいる者となした婚約は、公序良俗に反して無効とされたものがあります(大判大正9年5月28日民録26輯773頁)。