1.前回は、日影規制について簡単に触れてみました。今回は、近隣の建物により日照を害されていると思われる場合にとりうる請求について触れてみようと思います。

2.近隣の建物により日照を害された場合、とりうる請求としては①損害賠償請求、②建築差止め請求、があります。
その可否に当たっては、前回も述べた「社会通念上の受忍限度」に照らし合わせ、受忍限度を超えて権利の侵害が生じているか否かを判断しなければなりません。

3.さて、上記2種の請求について、実務上はこれを同列に扱わない傾向があります。すなわち、金で解決といえる損害賠償に比べ、差止めはかかる建築を禁止とするため、より建築者側に対する制約が強くなる(=差止めを認めるためには、より高度の違法性が必要とする)という考えです。

4.受忍限度は、特にどこかに基準化された一覧表があるわけではありません。結局は、実際にそこに住んでいる者に救済すべき権利侵害が生じていると一般に言えるかということです。前回触れた日影規制も、私人間紛争としての日照の問題における違法性を定める基準という趣旨のものではありません。

ただ、現在では密集した地域に多くの人が集まって暮らさざるを得ない、高層集合住宅に集まって暮らさざるを得ない、そういった事情があります。そのため、日影が気になるとしても、日影規制への違反が認められない場合には、なかなか対抗の請求は難しいということになるでしょう。