Q.
私の家はとある大学に近いので、近くのアパートには何人も大学生が住んでいます。この春から入学するであろう人が隣に越してきたのですが、毎晩友達を呼んで明け方までバカ騒ぎをしているので、睡眠不足で自律神経失調症になり、仕事に支障が出て通院することになりました。何度も注意して大家さんにも伝えたのですが、一向に改善されません。いっそ引っ越そうと思うのですが、引っ越し代をバカ騒ぎする大学生か、改善してくれない大家に請求することはできないでしょうか?
A.
騒音の程度にもよるのですが、睡眠不足で仕事にも支障が出て、ご通院されていることですので、仮に社会通念上受忍すべき限度を超えた、違法な騒音を発生させているとすると、その直接の発生源である隣の大学生に対しては、治療費や通院の慰謝料、引っ越し費用の請求などの損害賠償請求をすることが考えられます。しかし、大家さんに対しては、現在明らかな事情だけでは、直ちに大家さんに引っ越し費用等を請求できるわけではないため、まずは、大家さんに対して、隣室の騒音について改善してほしい旨と、改善されないのであれば引っ越しするしかないため、引っ越し費用を出してほしい旨を申し入れて交渉していくことが考えられます。

大学生に対して…損害賠償請求できる騒音の目安

 まず、隣の大学生についてですが、前提として、発生させている騒音が社会通念上受忍すべき限度を超えた違法なものである必要があります。受忍限度については、環境省の住宅地での環境基準として出されている、昼間は55デシベル以下、夜間は45デシベル以下というものなどが、一応一つの目安となりますが、実際に受忍限度を超えたといえるかどうかは、音の発生時間帯や性質・程度、被害状況などから総合的に判断されます。
 仮に隣室からの騒音が受忍限度を超えた違法なものであれば、騒音を発生させている大学生に対して、騒音によって自律神経失調症になったとして、治療費や通院の慰謝料、さらに騒音によって引っ越しせざるを得なくなった場合には、引越しの費用を損害として賠償請求することが考えられます。

大家に対して…改善されない場合について交渉する

 次に、大家さんについてですが、大家さんには、賃貸借契約の目的物であるアパートの部屋を入居者に使用収益させる義務があり、入居者に平穏な環境を提供すべき義務があるといえます。よって、大家さんには隣の大学生に騒音を改善するよう注意すべき義務があるといえます。しかし、これを怠ったとしても、騒音を直接発生させているわけではない大家さんに対して、治療費や通院の慰謝料を請求することはなかなか難しいものと考えられます。
 一方で、引っ越し費用については、理論上、隣の大学生が発生させている騒音が社会通念上受忍すべき限度を超えた違法なものであるにもかかわらず、大家さんが隣の大学生に注意しないことなどが、賃貸借契約の目的物であるアパートの部屋を入居者に使用収益させる義務に違反しているとまでいえるのであれば、債務不履行による損害賠償請求として引越し代を請求することが考えられます。
 もっとも、単に隣室の入居者からの申し入れがあったのにも関わらず注意をしに行かなかったことだけで直ちに使用収益させる義務に違反したいえるわけではないため、まずは、大家さんに対し、隣室の騒音について改善してほしい旨と、改善されないのであれば引っ越しするしかないため、引っ越し費用を出してほしい旨を申し入れて交渉していくのがよいと考えられます。