前回は、子どもが他人に損害を与えた場合について触れました。

しかし、世の中には逆に、他人の子どもを預かったところ、けがなどをさせる場合もあります。隣の家の子の面倒を頼まれる場合や行事の際に引率する場合、幼稚園や学校にいるときなど、これらの場合の事件・事故です。
この場合のポイントとして、預かった人が直接子どもにけがをさせた場合のみならず、子どもがけがをするのを防げなかった場合にも責任を負わされうるという点があります。

子どもを預かった者の責任は、預かるに至った経緯や預かっている状況、有償なのか無償なのか、子ども自身の年齢や判断能力など個別の具体的事実に応じて、様々に判断されているようです。代表的な先例、判例があるというより、過去に色々な状況について判断がされているため、似たような先例を探して、それを手掛かりに責任の有無や程度を判断することとなると考えられます。

もっとも、子どもは何をしでかすか予想がつかないため、預かった以上は最低限の注意義務は生じます。うっかり目を離して、その間に子どもがけがをすることがあれば、過失ありと評価されうるでしょう。近所づきあいのよしみで隣の家の子を半日預かるくらいの話であっても、預かる以上は最低限の責任を負うということを忘れず、きちんと注意は払うべきです。

なお、けがをするに至った経緯を見て、子ども自身にも落ち度が認められる場合には、過失相殺による調整がされます。この際、「子どもは何をしでかすかわからないのは仕方ないにしても、何かしでかしてけがをしたならそれは落ち度として評価しないとならない」とでも考えられているのか、子どもの事案では5割を超えるような大幅な過失相殺を認定する事例も多く存在するようです。

それと、物事の是非を判断することができないような幼い子どもの場合には、「子どもと身分上ないし生活関係上一体をなすとみられる関係にある者」に過失が認められる場合には、それを被害者の過失とする、被害者側の過失論に則った過失相殺の処理がなされるようです。難色を示している相手に無理を言って子どもを預かってもらうようなことは、やめた方がいいと思います。