都市部は大勢の人が密集して暮らしています。自然、住居についても密集して建てられることとなり、隣家との距離は近くなります。また、人口が多いことから、高層の集合住宅が建設されることも多くなります。
住居が近距離間に密集することとなった場合、各個の快適な住環境を確保するための調整がだんだんと困難になります。騒音、風害、日陰の作出などは居住者にストレスを強いるものであり、それについては予防や対策が求められることとなります。
今回は、日照の確保を取り上げようと思います。
日照の確保は、細かくみるとかなり長く、入り組んだ話となりそうです。そのため、ここで触れるのは大きな枠組みの話とします。
日照の確保も、ご近所問題の一種であり、それを捌くキーワードはやはり「社会通念上の受忍限度」を超えるか否かということとなります。その判断に当たっては、日陰を作っている建物の必要性や、日陰となっている建物の回避可能性、双方の住人の居住の先後関係、解決のための交渉の有無や内容などがかかわってきますが、中核となるのは「日影規制」と呼ばれるものです。
日照の確保についての大本となっているのは、建築基準法56条の2ですが、日影規制は同条を基に定められています。規制の要点としては、都市計画法の用途地域により差を設けていること、それと当該建物が生み出す日影が規制される時間の定め方です。
用途地域の差は、第一種・第二種低層住居専用地域につき規制を最も強くし、次は第一種・第二種中高層住居専用地域、最後に第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域及び準工業地域という序列となっています。その他、用途地域の指定のない区域についても行政の指定で規制を及ぼせます。
商業地域や工業地域は、日影規制の適用対象外です。
日影の規制時間については、冬至日の午前8時から午後4時までの間に生ずる日影の時間を対象とし、当該建物の敷地境界線からから5メートル離れたラインの外側、同じく10メートル離れたラインの外側の二段階で規制時間を設けています。5メートルラインより10メートルラインの方が、日影時間の規制は厳しくなります。
また、日影時間は地面において計られるのではなく、地面から所定の高さを設けて計ります。この高さが高くなるほど、地面に写る影の大きさとしては大きなもの(つまり、影を生む元の建物が大きい)が求められることとなります。第一種・第二種低層住居専用地域では1.5メートル、その他では4メートルか6.5メートルとされます。