こんにちは。
 本日は、「一般民事事件」と言われる雑多で幅広い法律分野の中でも、「損害賠償」と同じくらい、“オールマイティー”な使い方ができる請求権をご紹介します。

「不当利得返還請求」(民法703条)

 法律上の原因無く他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 要するに、原因が無いのに、ある人が「得」をしていて、それが原因で別の人が「損」をしている場合に、「損」をしている人が、利益を返せ!という請求をするということですね。

 例えば、以下のような場合に使えます。

  • 他人の持ち物を勝手に使っている人に、持ち主が返せ!
  • 保険金を不正に受給した人に、保険会社が返せ!
  • 他人の所有地を勝手に使っている人に、その使用価値分を返せ!
  • 2人の共有の物を無断で独占している人に、使えない人の分の利益分を返せ!
  • サービス残業した分の賃金相当額を、会社に返せ!
  • カラ出張や実体のない経費を、議会に返せ!

 この場合に重要なことは、「得」している人は、「損」している人に対して「その利益の存する限度において」返還すれば足りる、という点です。
 つまり既に浪費しつくして、利益が溶けてなくなってしまっている場合、返還請求はできない、もしくは、残っている分だけ返せばいいことになります。
 (ただし、自分の権利だと知っていたかどうかで、多少の対応の違いがあります。)

 ちなみに、私は相続事件において、「不当利得返還請求」を使ったこともあります。皆さんも、是非、どんな場合に使える権利なのか、考えてみてくださいね。

弁護士 井上真理