我々弁護士は、日々本当にさまざまなご相談を受けています。
 その中で、つくづく感じるのが、刑事事件と民事事件の垣根の低さについてです。

 私自身も、「あなたは刑事事件も扱うのか?」という質問を時々受けることからも、一般に民事事件と刑事事件とははっきり別のものであるという認識が強いのではないかと思います。

 確かに、民事の裁判と刑事の裁判は別個のもので、手続きもかなり異なっています。

 しかし、例えば、働いているお店からお金をくすねていたことが、お店にばれた!
 という相談があるとしますね。
ご相談者様は、自分は警察に捕まるのか?どのくらいの罪になるのか?という点を心配して刑事事件のつもりで相談に来たのかもしれません。
 ところが、この相談を受けた弁護士との間で、
 とりあえずお店に謝罪してお金をどういう方法でいくら返して・・・つまり、「示談交渉」という形で事件を進めるのだとすれば、それは一つの「民事事件」なのです。

 また、不倫したな!今すぐ500万払え!払わなければ会社や家族にばらすぞ!
 という話は一見民事事件ですが、
 他方で見方によっては、脅迫事件や名誉棄損事件として「刑事事件」になる可能性を秘めているのです。

 ご相談の際には、民事であっても刑事であっても、とりあえず、ありのままの事実をできるだけわかりやすく、詳しくお伝えください。それが「民事」なのか、「刑事」なのか、また、そうだとしてどのような解決方法があり得るのか、ということは弁護士と一緒に相談し、考えていきましょう。

弁護士 井上真理