2 枝を切ってください
こういう枝は、その植木の所有者に、切るように言えるのでしょうか。
民法には、枝の張り出しについて、「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。」という定めがあります(233条)。ただ、これは、相隣関係といって、お隣さんどうしを調整するための規定です。公道に枝が張り出している場合、公道の管理者の自治体が木の所有者に対して「枝を切れ」と言えることになりそうです。
しかし単なる通行人には、当然には「枝を切れ」と言う権利まではなさそうです。「枝を切らせる」ことは木の所有者の所有権を制限する行為ですが、単なる通行人は木の所有者の所有権を制限しなくても、そこを通らなければすみますから。
3 けがをしたのでお金を払ってください
もしも張り出した枝が目に刺さったとか、顔を傷つけたといった場合、その木の所有者に、「けがをしたから治療費などお金を払ってください。」と言う(損害賠償請求する)ことができるでしょうか。ある人の管理する木が他人に損害を与えたことを「不法行為」(民法717条)にあたるとして損害賠償請求をされるような場合を考えてみます。
木の枝は、どうしても敷地からはみ出してしまいがちです。とくに都会は土地が狭いですから、敷地からはみ出さないように木を植えるのは至難の業です。ほんの数センチ張り出した枝で、たまたま怪我をしたような場合でも、必ずその木の所有者が損害賠償を負うのだとしたら大変です。
これは、そのような木の枝が人に害悪を及ぼすことを予想できたか、といった問題になると思われます。数センチ程度張り出していた程度では、あまり害悪は予見できないのではないかと思いますが、例えば張り出し幅が1メートル、地面から150センチメートルくらいのところに張り出していたら、人が通行する際に、けがをするかもしれないと感じますよね。
木の所有者は、枝ぶりが美しいからといってそのままにせず、通行の妨害との兼ね合いで切ることも考えたほうがよいということです。
以上、木の枝一つにまつわるエピソードでした。