- A.
- 原則として、犬が食物アレルギーにより体調を崩して粗相し、家具を汚したら、飼い主がその賠償責任を負います。ただし、友人が食物アレルギーを知っていた場合、飼い主は賠償責任を負わないということになります。
友人に飼い犬を預かってもらう行為は、民法上、「寄託」という行為にあたります。寄託というのは「当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」(民法657条)というものです。かんたんにいうと、物を預けてしばらく保管しておいてね、という契約です。飼い犬は、法律上は「物」扱いですから旅行中にしばらく友人に預け、面倒をみてもらうことは「寄託」になります。預けたあなたは「寄託者」、預かった友人は「受寄者」と呼ばれます。
寄託には、2種類あります。お金を払って預かってもらうことを「有償寄託」、タダで預かってもらうことを「無償寄託」といいます。
受寄者の責任を考える場合は、有償寄託と無償寄託で、受寄者の責任のレベルは異なってくるという特徴があります。有償寄託だと、善管注意義務、つまり、その人の社会的地位、職業などにおいて一般的に要求される程度の注意を果たす義務があります。
対して無償寄託だと、「自己の財産に対するのと同一の注意」、つまりその人の能力に応じた注意をしていれば、注意義務を果たしたことになります。
本件は寄託者の賠償責任が問題になっています。このような場合ついて、民法661条に「寄託者は、寄託物の性質または瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。ただし、寄託者が過失なくその性質もしくは瑕疵を知らなかったとき、または受寄者がこれを知っていたときは、この限りではない。」と定められています。
本件のようなケースでは、食物アレルギーが「寄託物の性質または瑕疵」と考えられます。
この民法661条本文によれば、原則として、犬が食物アレルギーにより犬が粗相し、家具を汚したら、それは飼い主の責任となり、飼い主は友人に家具の汚損による損害(クリーニング費用、修繕費用など)を賠償しなければなりません。他方、民法661条但し書きによれば、友人が食物アレルギーを(たまたま)知っていた場合、飼い主は責任を負わず、賠償しなくてよいということになります。
もしも飼い犬に食物アレルギーがあるなら、事前に友人に伝えておくべきですね。
そうしないと、友人宅に思いがけず高級ペルシャ絨毯なんかがあった場合、想定外の賠償が必要になるかもしれませんよ。