春になりましたね。桜があちらこちらできれいに咲いています。
さて、暖かくなってくると、動物たちも外で活発に動くようになりますね。そこで本日は、猫に関するご近所同士のトラブルについてのお話をしようと思います。
1 トラブルが生じるきっかけ
猫が好きな人にとっては、猫も人と同じ、生活するうえでのパートナーだったりします。でも、大切な存在だからこそ、周囲の人がどう感じているのか見えにくくなってしまって、いつの間にか大きな問題になってしまうこともあるので要注意です。
猫に関するトラブルで多いのは、野良猫に餌をやり始めたところ、居ついてしまって、そのうち糞尿や餌の管理が行き届かず、周囲の人に嫌な思いをさせてしまう、というケースです。特に都会地では、野良猫も人間の居住地と隔絶した場所に住処を見つけることは困難ですから、居心地のいい場所、餌をもらえる場所を見つければ、そこに居ついてしまう可能性は高くなりやすいのだと思います。
そのようにして野良猫が居つくケースでは、餌付けはするけれども糞尿の管理には行き届かないことが多いのかもしれません。どうしても猫かわいさに、餌はやるけれども、糞尿による周囲への影響には意識が向きにくいということが、周囲との軋轢の一つの原因とも考えられます。
2 猫の飼い主の責任
このようなトラブルについて、例えば、福岡地方裁判所平成27年9月17日判決においては、野良猫に継続的に餌やりをする行為は「それ自体が直ちに非難されるべきものではなく、可能な限り尊重されるべきとはいえるものの、他方で、相隣関係においては相互に生活音平穏その他の権利利益を侵害しないよう配慮することが求められる」として、「餌やりによって野良猫が居着いた場合、その野良猫が糞尿等により近隣に迷惑や不快感その他の権利利益の侵害をもたらすことがある以上、そのような迷惑が生じることがないよう配慮することは当然に求められるというべきである。」としています。
3 近隣住民の対処方法
では、このようなトラブルに直面した近隣住民は、どのようにしたらよいのでしょうか。
このようなトラブルの拡大を防ぐためには、猫の飼い主に苦情を申し入れることをきちんと行っていかなければなりません。言わなければ「そんな被害が出ているなんて知りませんでした。」と言われる可能性があります。一度の申し入れで改善されなければ、複数回、申し入れる必要があります。実際、猫の糞尿等のトラブルで訴訟になるケースだと、近隣住民や集合住宅の管理組合からの申し入れ、行政機関からの行政指導などが何度もあった事実が認定されたうえで、猫の飼い主が周囲への被害を認識していたか(認識できたか)どうかが判断されています(上記福岡地裁判決や、東京地方裁判所立川支部平成22年5月13日判決)。
また、糞尿の実態については、ある程度長期間にわたって写真を撮影したりする証拠収集をきちんとすることも必要です。そうしなければどのような損害が生じたのかが認定できません。例えば、上記福岡地裁判決の事例では、猫よけのネットの設置費用8100円は損害として認められましたが、糞尿にまみれたと主張した砂利の敷き換え費用は、糞尿にまみれているかどうかが確認できないとして損害とは認められませんでした。
4 トラブルの拡大を防ぐ
飼う側としては責任を持つことを自覚し、周囲の人も被害を感じたらなるべく積極的に飼い主に申し入れをしていくことが必要になると思われます。堅苦しい関係になってしまいますが、これだけ人が密集して生活しているのですから、このような問題が生じた場合には互いに落ち着いて行動し、未然にトラブル拡大を抑制できるとよいですね。