所得税についての基礎

1.「所得税」とは何か

 「所得税」については、みなさんもおなじみだと思います。サラリーマンの方々であれば、毎月給与明細を見ると差し引かれている「あれ」です。また、事業を行っている方であれば毎年申告しなければいけない「あれ」です。このブログを書いている私自身も、毎月の給与から差し引かれています。
 そこで、今回は、そもそも「所得税」とは何なのか、という話からさせていただきたいと思います。

2.所得税の「所得」

 所得税はその名の通り「所得」にかかる税金です。この場合の「所得」とは、我が国の税法上、その人間が1年間に得た経済的利益の一切を合計したものになります。

 たとえば、働いて得た給料や事業の収入は典型的な「所得」になりますし、競馬などで勝って得られたお金も「所得」になります。そのほか、趣味の家庭菜園で作った野菜を売って利益を得ていれば、その利益はやはり「所得」になります。さらに言えば、「所得」はお金である必要はなく、お金以外のものを得た場合なども「所得」にあたります。
 このように、その人間が得た経済的利益の一切を「所得」ととらえる考え方を「包括的所得概念」と言います。

3.所得税と贈与・相続

 さて、ここまでの説明で「子供のお小遣いも『所得』」にあたるの?」と言った疑問や「相続した財産は相続税を払っているはずなのに、『所得』にあたるの?」という疑問がわくかもしれません。
 所得税法を見ると、

次に掲げる所得については、所得税を課さない」(所得税法九条一項)
とされており、その中に
相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」(同項一六号)
という規定があります。

 この規定から「所得税法」は相続や個人からの贈与による経済的利益について「所得」には当たるが、所得税を課さない「所得」として扱っているとしていることがわかります。これらの相続や贈与については別途、相続税や贈与税によって負担すれば十分であり、所得税を課す必要がないからです。

4.所得税を課されない「所得」

 さらに、別の理由で所得税を課さない「所得」とされているものもあります。たとえば、「ノーベル賞の受賞により公布される金品」なども所得税を課されない「所得」にあたります。また、何かと話題のオリンピック・パラリンピックですが、オリンピック・パラリンピックで優秀な成績を収めた選手に対して、日本オリンピック委員会や日本障害者スポーツ協会などが出す報奨金も、所得税が課されない「所得」にあたります。
 これらの「所得」については、功績のある研究者やスポーツ選手を優遇し、研究やスポーツを奨励する、という理由から所得税を課さないことになっています。

 そのほかにも、「文化功労者に与えられる年金」や「サラリーマンが会社から受け取っている通勤手当」なども所得税を課さない「所得」に定められています。
 もし機会があれば、所得税法の九条を見てみると、雑学として面白いかもしれません。