今回からM&Aに関連する法務実務に関し連載していきますので、よろしくお願いします。
 第1回目となる今回はM&Aを検討するきっかけとなるアドバイザリー会社や仲介会社について一般的な傾向及び留意点をお伝えします。

 M&Aの案件の紹介やアドバイスをもらう方式としては、大きく分けて2つの方式があります。具体的には、①売り手または買い手のいずれかの立場にだけ立ってM&Aのアドバイスをする方式と、②売り手および買い手両方の立場に立ってM&Aのアドバイスをする方式があります。このように両方の立場に立ってアドバイスをする方式においては、売り手の高く売りたいという利益と、買い手の安く買いたいという利益が相反する中でM&Aのアドバイスが行われることになるため、M&Aを行いたい会社にとって最善のアドバイスを得られなくなるリスクが潜在しています。ただし、両社の立場に立つケースでは、買い手と売り手の利害対立が先鋭化してM&Aがまとまりくいという状況を、中立的な観点から話をまとめるという役割を担うことができる場合もあります。

 そこで、M&Aを検討している会社においては、自社のニーズがどのようなアドバイス方式によって満たされるかを確認するために、最初の段階で紹介会社等が採用する方式を事前にしっかりと確認しておくことが重要となります。なお、一般的に①売り手または買い手のいずれかの立場に立つ方式をアドバイザリー方式と呼び、②両方の立場に立つ方式を仲介方式と呼びますが、契約書の名称はアドバイザリー方式でありながら、実質的には仲介方式を採用している場合もありますので、契約書の名称だけで決めつけないようにする注意も必要です。

 M&Aの報酬体系については、大きく分けて、3つ程度の体系があります。具体的には、①着手時に着手金、成約時に成功報酬を受領する報酬体系、②着手金は受領せず、成約時に成功報酬を受領する報酬体系、及び③リテイナーフィとして月々アドバイザリー料を受領した上で、着手金や成功報酬も受領する報酬体系があります。この成功報酬については、M&Aにおける譲渡額をベースにするのか、純資産額をベースにするのか、負債も含めた総資産額をベースにするのかによって成功報酬の額に大きな違いが生じることになります。特に総資産額がベースになってしまうと、成功報酬額も多額になるため、注意が必要です。そのため、成功報酬の対象となる額のベースがいずれの額となっているかについても事前にしっかりと確認しておくことが重要となります。