皆様、こんにちは。

 先日、集英社の申告漏れのニュースを見ました。申告漏れがよろしくないとされているのは、申告以上の所得等があるのに申告した金額に応じた課税で済んでしまうからですね。他方、皆様方は毎年節税に苦心されていらっしゃるかと思います。

 よく聞かれるものとして、本来払うべき税金を払わないことを「脱税」(「申告漏れ」は解釈の違いや経理上の見落としなど意図的でないケースを指します。)、ルールに従って適切に無駄な税金を払わないようにすることを「節税」と考えておられるのではないかと思います。

 それでは、考えるべきはこの2つだけでよいのでしょうか。もちろん、税理士さんに言わせれば無数にあると思われますが、今回は「租税回避」について簡単に紹介させていただきます。

 「租税回避」とは、「納税者が通常用いられる法形式とは異なる異常な法形式を選択することによって、結果的には通常の法形式を選択した場合に課されるべき租税負担を軽減ないし排除すること」(金子宏ら「税法入門」第6版・有斐閣新書)とされています。
 難しいので具体的に見ていきましょう。

 例えば、同書では土地の取引を例に挙げています。土地を誰かに売却する場合、売主は売買代金から売却益を得ることになります。そして、この売却益に税金がかかります。売却益が高いと課税額も高くなりますので、少しでも払う税金を安くしたいと思うわけです。

 そこで、先ほどの土地を売買するのではなく、とても長い期間にわたる賃貸借契約を締結し、買主は土地の時価と同じだけの金額を売主に融資して、地代と利子は同額ということにしてしまった上で両者を相殺する、という方法をとるとします。期間はとても長いので売買したのとほぼ同じように使い続けられますし、法律上(私法上)一応有効です。その上、こちらの方が発生する税金が少なくなるのです。

つまり、上記の例においては売買という通常の法形式とは異なり、賃貸借という法形式を採用することで税金の負担を軽くしていることから、租税回避にあたるといえます。

 しかし、このような方法で税金の節約を実現できたとしても、通常の場合と比べて著しく不公平な結果になってしまうような場合、法律上認めないとすることがあります。これを「否認」と呼んでいます。否認されると通常の法形式を選択した場合に引き直した上で課税額を算定されることになります。2で挙げた例でいえば、賃貸借で取引したとしても、売買によった場合ということで課税されることになります。

 否認に関しては、法人税法132条や所得税法157条などに規定されており、たとえば、同族会社(法人税法2条10号参照)や3つ以上の支店・工場その他事業を持つ会社など多くの会社が、租税回避に対する否認を受ける対象になっています。

 以上、みてきましたように「租税回避」は一応適法なやり方であるという点で違法とされる「脱税」と異なります。また、適法であるけれども特殊であるという点で、法律が予定した手段である「節税」とも異なります。

 租税回避の難しいところは、条文を参照しても否認されるか否かの判断がつきにくいところです。「良い方法を思いついた!」とひらめいても、税務署に認めてもらえないことがあるのです。経済的観点からみた実態や納税者に租税回避の意図・動機があるか、といった点が注目されるようです。

 何にしても専門家とご相談していだたくのがベターですが、通常の法形式どおりの課税がなされることを覚悟の上で、ということにもなってくるかもしれません。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。