こんにちは。
 今回は、平成25年2月に施行された改正特定商取引法についてお話しします。

 特定商取引法(正式名称「特定商取引に関する法律」。以下、「特商法」といいます。)は、訪問販売など消費者トラブルが生じやすい取引類型に関するルールを定め、事業者による不公正な勧誘行為等を規制することにより、消費者の保護及び商品等の健全な流通を図ることを目的とした法律です。

 こうした目的の下、従前の特商法では、消費者トラブルが起こりやすい以下の6つの取引類型を規制対象としていました。

① 訪問販売(自宅等への訪問販売、キャッチセールス、アポイントメントセールス等)
② 電話勧誘販売(電話で勧誘し、申込を受ける販売)
③ 通信販売(雑誌、ネット等の広告による場合など、郵便、電話等の通信手段により申込みを受ける販売)
④ 特定継続的役務提供に係る取引(エステ、語学教室、学習塾等が対象)
⑤ 連鎖販売取引(個人を販売員として勧誘し、さらに次の販売員を勧誘させる形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務の販売。いわゆるマルチ商法。)
⑥ 業務提供誘引販売取引(「この商品を買えば仕事を提供するので、収入を得られる。」と誘引し、仕事に必要であるという理由で、商品等を売る取引。いわゆる内職商法。)

 ところが、平成22年度から、貴金属等を中心に、訪問購入(いわゆる「押し買い」。)に関する消費者トラブルが多発するようになりました(平成19年度では30件だった相談件数が、平成23年度には4142件にのぼりました。)。相談者の属性は、女性や高齢者が多い状況でした。

 訪問購入の典型例は、以下のような事例です。

 一人暮らしの母宅に事業者から電話があり、いらない着物があれば売ってほしいということで訪問を許可した。すると、訪問した業者は、着物の買取りをするだけにとどまらず、「ついでに貴金属の鑑定もしてあげる」と告げ、断りきれない母の指輪を外し、500円(購入時の価格は10万円前後)で買い取っていった。

 こうした、訪問購入を巡る消費者トラブルが増加したことを踏まえ、政府は、特商法の目的を貫徹すべく、上記6つの取引類型に加え、特商法の中に新たに「訪問購入」の類型を追加し、「訪問購入」に関する行政規制、刑事罰、民事ルールを定めることにしました。

 かかる「訪問購入」を盛り込んだ改正特商法は、平成25年2月21日をもってすでに施行されています。そのため、改正特商法の規制対象となる物品の訪問購入を業とする企業の方々は、今後、「訪問購入」に関する改正特商法上のルールを知り、遵守する必要があります。

 ということで、今回は改正特商法の改正の背景についてお話ししました。
 次回以降、改正の概要等についてお話ししたいと思います。