こんにちは。
 前回に引き続き、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(以下、「高年法」といいます。)の一部を改正する「高齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」についてお話しさせていただきます。

 今回のテーマは、「労使協定による継続雇用の対象者を限定する仕組み」の「廃止」についてです。
 従前の高年法では、定年後の継続雇用において、労使協定により定められた規定により、継続雇用の対象となる労働者を選別することが可能でした。
 たとえば、「過去に懲戒処分を受けたことがないこと」「直近2年間の人事評価が平均以上であること」などの定めをし、それに満たない労働者を排除する制度設計が可能だったのです。
 ところが、「直近2年間の人事評価が平均以上であること」となると、単純に考えて半数の労働者が対象から外れてしまうだけでなく、会社の恣意的な判断により人事評価を下げる可能性もあります。
 そのような会社側の判断いかんにより労働者の生活が脅かされる事例が問題になり、実際にいくつかの裁判においても争われていました。
 そのため、改正高年法では、原則として、「労使協定による継続雇用の対象者を限定する仕組み」が「廃止」されることになりました。
 ですので、今後は、労使協定により継続雇用の対象者を限定することはできなくなります。
 現在、そのような規定を採用している企業は、厚生労働省による平成24年「高年齢者の雇用状況」集計結果によると、57.2パーセントにも上るとされており、就業規則の改定など、早急な対応が必要となります。

 次回は、「労使協定による継続雇用の対象者を限定する仕組み」を採用している企業において、そのような仕組みを今後も一定期間利用することができるという経過措置についてお話ししたいと思います。

 経過措置を利用する場合には就業規則の改定が必要ですが、改定に際しては制度に対する正確な理解が必要となります。就業規則の改定については、弊所でも依頼を受けつけておりますので、ぜひご利用ください。

弁護士 中村 圭佑