こんにちは。
 前回のブログ(平成25年2月20日付)に続き、今回も、建物・土地賃貸借契約の賃借人が暴力団員等であることが判明した場合の対処法についてお話しします。

 前回のブログでは、賃貸借契約の中に暴力団排除の条項がない場合、賃貸借契約を解除するためには、賃借人が暴力団員等であることとは別に、賃貸人との間の信頼関係が破綻したと言える事情が必要となることをお話ししました。

 こうした事態を回避するために、事前の予防策として重要になるのが、「暴力団排除条項」です。

 「暴力団排除条項」とは、暴力団員等の反社会的勢力との取引を拒絶する旨を規定し、賃貸借契約締結後、賃借人が暴力団員等であることが判明した場合、そのことだけをもって賃貸借契約を解除できる旨を規定する条項です。

 暴力団排除条項を置くことで、賃貸人が、賃借人が暴力団員等であることを拒絶していることが賃貸借契約上明確となります。その状況下において、賃借人が暴力団員等であることが判明した場合、当該賃借人が、賃貸人が暴力団員等を拒絶していることを知りながら、暴力団員等であることを秘して契約したということになるため、暴力団員等であること自体が、賃貸人との間の信頼関係が破綻したことを裏付ける事情となるわけです。

 このように、事前の予防策として有効な「暴力団排除条項」ですが、これをより実効的なものとするためには、以下の点に配慮することが必要と考えられます。

① 排除対象を指定暴力団員等に限定せず、広く「反社会的勢力」を排除対象としておく
 現在の暴力団の組織は細分化され不透明なものとなっていることから、排除対象に漏れがないようにしておく必要があります。

② 暴力団員等に多く見られる違法・不当行為を行った場合に賃貸借契約を解除できるように定めておく
 今日では、暴力団員等であることを前面に出す者は少なってきているため、暴力団員等であることを窺わせる違法・不当行為(物件内で拳銃や覚せい剤を所持していた場合、反復継続的に暴力団員等を出入りさせた場合、暴力団員等であることを推知させる名札・名称等を掲示した場合など)が行われた場合にも、賃貸借契約を解除できるようにしておく必要があります。

③ 賃借人に、書面で、暴力団員等でないことを表明保証させる
 書面で表明保証させることにより、後日暴力団員等であることが判明した場合に、信頼関係が破綻したことの有力な証拠となります。

④ 暴力団排除条項違反により契約を解除した場合、賃貸人に損害賠償責任が発生しないことを明記しておく
 暴力団排除条項違反を理由に賃貸借契約を解除した後、当該暴力団員等との間で解除に関する争いが生じるのを事前に防ぐためです。