平成24年、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(以下、「高年法」といいます。)の一部を改正する「高齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」が制定され、平成25年4月1日から施行されることになります。

1.改正の背景

 昨今の少子高齢化により、若年層だけでは労働資源としては十分ではなく、高齢者等も含めた働くことのできる人全てによる全員参加型社会の実現が要求されています。

 また、日本の高齢者の就業意欲は非常に高く、同時にその経験や能力を有効に活用できれば、会社の発展の助けとなります。そして、一方で、今後厚生年金等の受給開始年齢が65歳まで引き上げられる予定であることから、高齢者の生活資金確保のために年金受給開始年齢まで雇用を確保する必要性が生じてきました。

2.改正の概要

 主な改正内容は、①労使協定による継続雇用者を限定する仕組みの廃止、②継続雇用される企業の範囲を特殊関係事業主に拡大する(9条2項改正)、③罰則として企業名を公表する規定の新設(10条3項)、④現行の継続雇用規定を「すでに厚生年金受給開始年齢に到達した以降の者」に限って、12年間引き続き運用できるという経過措置、となっています。

3.改正による注意点

 今回の改正によって、今後、原則として65歳までの継続雇用制度を採用しなくてはならなくなりました。これまでの高年法では、継続雇用制度を採用した場合であっても、特定の条件に該当する労働者のみを継続雇用しない旨の制度を採用できましたが、今回の改正により、今後、除外制度を採用することはできなくなりました。

 もっとも、継続雇用の際の雇用先については、企業の受け皿を考えて、特殊事業関係事業主にまで拡大しているため、雇用先についての選択肢は広がっています。

 そして、これを守らない場合には、企業名の公表という罰則が新設されたため、特にこれまで除外規定を採用してきた企業はもちろん、そうでない企業も、これに対応すべく、労使協定や就業規則を改める必要があります。

 次回は、①労使協定による継続雇用者を限定する仕組みの廃止について具体的に述べていきたいと思います。

弁護士 中村 圭佑