こんにちは。
 平成24年8月22日付のブログでは、賃貸借契約における保証人の責任は、信義則に基づいて一定の限定がかかる場合があるということをお話しました。

 それでは、賃借人が賃料を支払わないにもかかわらず、賃貸人も賃貸借契約を解除しないという場合、保証人は、一方的に保証契約を解除することはできるでしょうか。

 保証契約も契約の一種であり、契約で一度決めたことには拘束力が生じますから、原則としては、保証人側で一方的に解除することはできません。
 その一方で、賃貸借契約の場合、保証期間や保証(責任)の範囲は限定されていないことが通常ですので、どんな事情があっても解除できないとするのも、保証人の保護に欠けることになります。

 そこで、古いですが、判例(大判昭8.4.6)は、期間の定めのない保証契約を締結後相当期間が経過し(①)、かつ、賃借人がしばしば賃料の支払いを怠り、将来においても誠実にその債務を履行する見込みがないにもかかわらず(②)、賃貸人が賃貸借契約の解除・明渡請求等の措置を取らない場合(③)、保証人は、賃貸人に対し、一方的に保証契約を解除することができる旨判示しています。
 したがって、上記①から③の要件を満たせば、保証人は一方的解除をなしうるということになります。

 ただし、どのような場合に①から③の要件を満たすかについては、必ずしも判例の集積があるわけではなく、ケースバイケースにならざるを得ない部分(特に、①の「相当期間」)は出てくると思われます。
 実際、比較的最近の裁判例では、滞納賃料は1年6ヵ月近くにのぼっているが、賃借人が事前に差し入れていた保証金を差し引けば、実質1ヶ月程度の滞納があるにすぎない場合において、保証契約の一方的な解除を否定したものがあります(東京地判昭51.7.16)。

 したがって、保証人が、賃貸人との間で保証債務の存在・範囲について争う場合には、保証契約の解除とともに、解除が認められない場合に備えて信義則に基づく責任の限定も併せて主張するのがベターと思われます。