こんにちは。
 平成24年7月19日付のブログでは、賃貸借契約における保証人の責任は、原則として、賃貸借契約の更新後も存続する(最高裁平成9年11月13日判決)ということをお話させていただきました。

 それでは、更新後の保証人の責任に限定がかかる場合はあるのでしょうか。

 上記最高裁は、「賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」と述べており、下線部分にあるとおり、信義則に基づく責任の限定がかかる場合があることを示しています。

 そして、かかる信義則による責任の限定を認めた裁判例として、東京地裁平成10年12月28日判決があります。
 本判決は、賃借人が200万円もの賃料を滞納し、賃貸人も契約の更新に消極的であったにもかかわらず、法定更新により賃貸借契約が存続した結果、最終的に滞納賃料が400万円にのぼったという事案において、このような事態が、連帯保証契約の締結時点において、契約当事者間で予想されていたとは言いがたく、連帯保証人において、更新後は責任を負わないと信じるのは無理からぬものであるとして、更新後の責任を否定しました。

 一方で、東京地裁昭和62年1月29日判決は、賃貸借契約の更新によって、数か月分以上に保証人の責任が重くなるような場合であっても、賃貸人が保証人に対してその事情を通知すべき信義則上の義務はないとして、更新後の未払い分(6ヶ月分)も含めて保証人の責任を肯定しました。

 結局のところ、信義則により保証人の責任を限定するか否かは、賃貸借の期間、賃料の増加の程度・滞納額、支払遅延期間、賃貸人の内心等を考慮したうえで、賃貸人の請求が保証人の予想の範囲を超えるか否かを検討して判断することになると考えられます。

 なお、定期建物賃貸借契約の場合、契約の更新がなく、契約期間の満了をもって賃貸借契約は終了することから、保証人の責任も当初の契約期間内に限られることになると思われます。