こんにちは。暑いですね。

 連帯保証人付きの建物賃貸借契約において、契約が複数回合意更新される間に賃借人が家賃を支払わなくなり、未払賃料が溜まった場合、賃貸人としては、回収可能性の低い賃借人よりも、確実に債権を回収できそうな連帯保証人に請求をかけたいところです。
 それでは、連帯保証人が「賃貸借契約の更新契約書には、当初の賃貸借契約書とは異なり、連帯保証人の署名押印がなされていないし、合意更新の際保証意思が確認されたこともないから、合意更新後の未払賃料債務について保証人としての責任を問われるいわれはない。」と反論してきた場合、賃貸人は、連帯保証人に対し、保証債務として未払賃料債務の支払いを求めることができるでしょうか。

 この問題については、関連規定として、民法619条2項があります。同条項は、「従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。」と規定しています。
 ここにいう「担保」に、人的担保=連帯保証も含まれると考えれば、当初の賃貸借契約の期間満了をもって連帯保証契約も終了するようにも思えます。

 しかしながら、判例は、必ずしも上記のような見解をとっているわけではありません。
 すなわち、最高裁平成9年11月13日判決は、

「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」

と判示し、合意更新後に溜まった未払賃料合計約835万円について、連帯保証人の責任を認めました。
 上記最高裁がかかる結論をとったのは、①建物賃貸借契約は、期間満了に伴い更新されるのが一般的となっており、保証人としても当然更新による賃貸借契約の継続を予期すべきであるし、②賃料債務は定期的かつ金額が確定しているものであるから、基本的に保証人の予期しないような保証責任が発生することはない、という理由からです。

 したがって、上記連帯保証人の反論や民法619条2項の規定にかかわらず、賃貸人は、保証人に対し、未払賃料債務の支払いを求めることができます。

 ただし、上記最高裁判例が存在するからといって、必ずしも契約更新後の保証人の責任が無制限に肯定されるというわけではなく、下級審裁判例の中には、利益衡量の観点から、保証人の責任に限定をかけるものもあります。
 この点については、また次回のブログで書きたいと思います。