皆さん、こんにちは。

 5月31日の記事では、同じ発明を同日に2人以上の者が出願した場合、特許法は、同日の時間の先後までを考えて保護する者を決しようとはしていないことを説明しました。その理由は、出願された日を時間まで正確に記録することは煩瑣であるし、同じ発明を別の人が同時に出願するという自体はやはり考えられ問題の根本的な解消とはならないこと、同じ発明を別の人が同日に出願することは数多く生じるとは考えにくいという点がありました。

 それでは、特許法は同じ発明を別の人が同日に出願する場合をどのように規定しているのでしょうか。

 特許法39条2項は、「同一の発明について同日に二以上の特許出願があったときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。」と規定しています。

 以上のように特許法は、同じ発明を別の人が同日に出願した場合、出願人が協議して一人の出願人のみが特許を受けることができるとしています。また、協議が成立しないようなときは、だれもその発明について特許を受けることができないとしています。

 後段のように誰も特許を受けることができないようにしておけば、一方だけを保護する場合に比べて、どちらの出願人もその発明を実施できるという点に利点があると思います。そして、このように規定しておけば、協議を促進して協議が成立しやすくなるという効果も考えられます。

 実際上このようなことが生じると、協議により一方の出願を取り下げて、もう一方の出願の特許を受ける権利を取り下げた出願の出願人に譲渡して、特許権を共有にする場合が多いのかなと思います。

 同日に出願がある場合の特許法の規定について説明しました。
 それでは、また。

弁護士 福永聡