これまで従業員の競業避止義務について6回にわたり記事を書いてきましたが、今回は、これまでの記事を踏まえて会社として従業員の競業行為についてどのように対応していけばいいかをまとめたいと思います。
まずは、在職中の競業行為もしくは退職後競業行為かという視点と競業行為禁止規定を設けているか設けていないかという視点をもって考える必要があります。簡単に言えば、競業行為禁止規定があり、かつ、競業行為が在職中に行われたものであれば、従業員の義務違反を問いやすく、反対に競業行為禁止規定がなく、かつ、競業行為が退職後に行われたものであれば、従業員の義務違反を問いにくくなります。
そうすると、当然ですが、従業員の競業行為を禁止したい場合には、競業行為禁止規定を就業規則や労働契約の特約で設けるべきということになります。ただし、退職後の競業行為を禁止する場合には、従業員の職業選択の自由との関係が問題になるため、広範な規定では無効になってしまいます。ポイントは、禁止期間、禁止対象者の範囲、代償措置、職種・地域の範囲、禁止する競業行為の態様について、会社の営業上の利益を保護するうえで相当な範囲で制限するということです。
もう1つの視点である在職中か退職後かという点についてですが、在職中であれば、明確に禁止規定がなくても労働契約上の義務ということで、従業員の義務違反を問い得ることが多いと思います。一方、退職後については、明確な禁止規定がなければ、従業員の義務違反を問うことはかなり難しいと思います。もっとも、明確な禁止規定がなければ絶対に従業員の義務違反を問えないということではありません。義務違反の態様が社会的相当性を超えるような悪質なものであれば、義務違反を問うことは可能です。
従業員が会社と競合する行為を行うことは、会社の利益を守るために必要なことですが、一概にこうすれば会社の利益を守ることができる方法があるわけではないので、弁護士等に相談してみるとよいと思います。
弁護士 竹若暢彦