前回の最後からの続きで、建設現場の法律関係を取り上げようと思います。もっとも、これを全て取り上げるのはできませんので、代表的なもの、よくある関係者間の法律関係に絞って触れることとします。
まず、注文者と建設業者との関係があります。前回述べたとおり、この両者の関係は多くの場合請負契約となると考えられます。即ち、建設業者は仕事の目的物である建築物を完成させて注文者に引き渡し、注文者は建設業者の完成させた仕事に対し報酬を支払うという関係が原則となります。
次に、注文主と建築士との関係があります。建設工事において建築士が関わる部分としては、設計と工事管理があります。
設計契約と工事管理契約の法的性質については、請負契約、委任契約、非典型契約など色々な考えがあるようです。建築士の責任については、紛争となれば、契約書の文言や合理的に推定される当事者の意思などを基に個別具体的に判断されることとなるでしょうが、その専門的地位などから、適正な工事の実現に対し高度の注意義務を負っているとは言ってもよいかもしれません。
その他、建設業者と下請業者との関係もあります。この両者の関係は、基本的に請負契約と解されるでしょうが、建設業法や公正取引法の影響も受けることとなります。一括下請や取引上の地位の不当利用と考えられる行為については注意が必要となります。
最後に、横並びの建設業者間の関係を取り上げます。建設工事においては、複数の建設業者が共同して工事を請け負うこともあります。ジョイント・ベンチャーと呼ばれるものです。
ジョイント・ベンチャーについては、通説・判例とも、民法上の組合であると解しているようです。また、判例からは、ジョイント・ベンチャーについて代表者を定めておけば、民事訴訟法29条よりジョイント・ベンチャーの名で訴訟の当事者となれると考えられます(最判昭和37年12月18日民集16-12-2422)。