前回に引き続き、交通事故の際に企業が被る損害について、お話したいと思います。
(前回の記事はこちら:交通事故の際に企業が被る損害について)
今回は、物損の中の「評価損」についてお話します。
事故によって損傷した自動車は、修理しても、
・修理技術上の限界から、自動車の性能、外観等が事故前より低下すること
・事故による衝撃から、車体や部品に負担がかかり、経年的に不具合がおこりやすくなること
・隠れた損傷があるかもしれないと疑われたりすること
などから、「事故歴車」「修復歴車」などと呼ばれて、売却価格・下取価格が事項に遭わない同種の車に比べて低く評価されます。このような商品価値の下落が認められる場合の損失を「評価損」といいます。
評価損は、事故によって車を修理すれば必ず発生するとはいえません。発生する場合もあれば、発生しない場合もあり、この基準はいまだ明確ではありません。ただし、初度登録から事故日までの期間が短いほど、また、損傷の程度が大きいほど、認められやすいということはできるでしょう。
このように、評価損は発生の事実が曖昧であることに加え、その算定も困難な面があります。
これは、評価損とは、修理してもなお完全に修復しえない損害ですので、事故直前の車両売却価格から、事故後の未修理車両売却価格と修理費を差し引いた額ということになりますが、この「事故後の未修理車両価格」の算定は、何によればいいのか、適切な資料がないためです。
裁判例の大勢は、評価損を認める傾向にあるといえますが、認容した場合の評価損算出基準には、
① 差額基準(事故直前の車両売却価格と修理後の車両売却価格との差額)
② 修理費基準(裁判所が認容した被害自動車の修理費の一定割合)
③ 時価基準(裁判所が認容した被害車両の時価の一定割合)
④ 総合勘案基準(車種、初度登録からの経過年数、修理金額等の事情を総合勘案)
の4つがあります。
上記4つの算定基準の中で、件数的には②修理費基準がもっとも多く、その中で、修理費の30%とするのが最も多いとされています。