最近、機会があって、建築紛争について少し調べることがありました。いい機会ですので、これから折を見て時々、建設工事関係の記事を書いていこうと思います。

 さて、今回は自分にとっても最初なので、入り口の話から始めようと思います。即ち、そもそも建設工事を規律する法律関係は、どのような契約類型に当てはまるかです。

 建設工事と言ってまず思い浮かぶのは、請負契約です。建物建築は請負契約の代表としばしば言われ、建設工事の標準約款の名称も「民間連合協定標準工事請負契約約款」や「公共工事標準請負契約約款」のようになっています。多くの場合、建設工事は建築物の工事を完成させることが目的となるため、このように解されるのでしょう。

 しかし、建設の建設だからといって、全てが請負契約として解されるのでしょうか。例えば、建築物の施工を終了させただけでは十分でないような場合はどうなるのでしょう。井戸を掘ったが水が出ない場合、建築物としての井戸は完成していますが、それだけでは当事者の意思からすると不十分です。井戸はできているので工事は完成したと見るのか、水まで出ることを完成の定義に含めるのか、そもそも水が出るか否かは工事技術と無縁であるので、出水の有無の責任部分のみは請負を離れ準委任などで処理するのか。

 また、住宅建設は請負契約だが、物置の設置は売買契約だという感覚があるかと思いますが、この感覚の線引きはどこにあるのでしょうか。定型的なパーツから成る種類物のプレハブ小屋について、土地上にパーツを持ち寄って組み立てのみ行った場合、これは請負でしょうか売買でしょうか。

 また、契約全体をではなく、一つの建設現場を細かく見て行っても、建設工事は請負だけで語ることができないと思われます。建設工事は段階がいくつもあり、関係する人物、組織や機関が多数に上るため、法律関係も多種多様なものが複雑に入り組んでいます。設計、工事管理、施工と言った段階ごとの法律関係。注文者、建築士、施工者(元請、下請、孫請など)間のそれぞれの法律関係。全てを一括りにはできないと思います。

 建設現場の細かな法律関係は、全てを取り上げるには多すぎます。ただ、代表的なものについては、次に取り上げて行こうと思います。
 少々長くなったので、続きは次回とします。