最近は、健康志向やエコブームに乗って、電動アシスト自転車の人気が高くなっていますが、少し前には、バッテリーで駆動するモーターを搭載した電動ハイブリッド自転車を街で見かけることがありました。
今回は、この電動ハイブリッド自転車を販売するにあたり、本件自転車が道交法上自転車にあたると誤った商品説明をしたことにより、損害賠償を請求された事案についてお話しします。
カタログ販売業者Xは、自転車販売業者Yとの間で、平成14年11月ころ、A社が開発した電動ハイブリッド自転車の売買契約を締結し、これを販売していました。その後、平成17年4月頃、本件のような電動ハイブリッド自転車が、道交法上、自転車ではなく原動機付自転車にあたるとの判断が警察庁から出され、公道を走行するには運転免許が必要であるとされたことから、Xは、購入者に対して返品等の事後処理をせざるを得なくなりました。そこで、XはYに対し、本件自転車の販売が、基本契約書上の品質上の欠陥、商品の間違いにあたると主張し、債務不履行に基づき、返品費用、代替品費用、逸失利益等の損害賠償を請求しました。
主な争点としては、YがXに対して、この本件自転車を道交法上の自転車に該当するとして販売した行為が、基本契約上の品質上の欠陥ないし商品間違いにあたるか、という点でした。
この点につき、裁判所は、以下のように、本件自転車の販売行為が、基本契約上の商品の間違いにあたると判断しました。
まず、平成7年の道交法改正では、一定の基準を満たす駆動補助機付自転車(いわゆる電動アシスト自転車)が自転車に該当することを明確にして、当該自転車が満たすべき基準を法令上規定することにより、基準の透明性を確保しました。その後、平成17年4月頃に出された警察庁公示では、さらに一歩進んで、電動ハイブリッド自転車は、原動機を作動させず、ペダルを用いて、かつ人の力のみにより走行させることができるものであったとしても、道交法2条1項10号に規定する原動機付自転車に該当すること、道交法施行規則第1条の3で定める基準に該当する自転車(いわゆる電動アシスト自転車)は、電動ハイブリッド自転車ではないことが明記されました。
以上より、平成14年の基本契約締結当時から、自走機能を有する本件自転車は道交法上原動機付自転車に該当し、電源を切って自走機能を用いずに公道を走行しても、自転車になることはなく、そのような原動機付自転車である本件自転車を、自転車であるとして販売した行為は、基本契約書上の商品間違いにあたるとの判断をしました。
結果、裁判所は、Xの過失も考慮し、Yに約475万円の損害賠償義務を認めました。
なお、本件でYは、本件自転車を販売するにあたって、警察庁交通局に道交法上の位置づけを確認した旨の主張をしましたが、証拠上認定されませんでした。仮にこのYの主張が認められた場合、Yの過失ないし帰責性がなかったと判断された可能性があり、その場合はXが敗訴していたかもしれません。