こんにちは。
前回に引き続き、労災保険金が支払われる「業務上の災害」について、具体的なケースを見て行きたいと思います。
(前回の記事はこちら:労災補償について)
3 事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
出張や社用での外出などにより事業場施設外で業務に従事している場合、事業主の管理下は離れているものの、事業主の命令を受けて通常の勤務場所を離れて仕事をしているものであるため、仕事の場所がどこであっても、積極的な私的行為を行うなどの特段の事情のない限り、移動のための往復の交通機関からホテルなどでの宿泊を含む全過程について、一般的には業務災害と認められます。
たとえば、宿泊していたホテルで火事にあったとか、出張先で流行している伝染病にかかったという場合については、特別の事情のない限り、業務災害と認められます。しかし、出張中に私的に飲酒して酔っ払った結果怪我をしたといった場合には、出張に通常随伴する行為によるものとはいえず、業務災害とは認められません。
なお、外国出張の場合にも、出張期間の長短に関係なく、労働者の私的行為も含めて業務性が認められ得ます。
外国出張というのは、国内の事業場に所属しながら外国において当該事業場の指揮下に労務を提供する場合を指します。労働の提供の場は海外であっても、依然として事業主の指示・命令に従って業務に従事しているのですから、事業主の支配下にあることは変わりません。
そして、業務の合間の食事、宿泊、入浴などの行為は、出張業務に当然または通常随伴するものであるため、このような私的行為も含めて業務性が認められます。
4 その他、通勤途中の災害について
通勤は、事業場で業務を遂行するために必要な行為であり、業務との関連性は認められます。しかし、たとえば、突発事故のため休日出勤を命じられ、現場に行く途中に事故に遭ったなどの特別な事情がない限り、事業主の支配下にあるとは認められません。
但し、通勤災害制度により、住居と就業場所との往復の移動を合理的な経路及び方法に行う場合などには、業務災害に準じて保護されることになっています。