こんにちは。
前回に引き続き、労災保険金が支払われる「業務上の災害」について、具体的なケースを見て行きたいと思います。
2 事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
昼休みや就業時間前後のように業務に従事していない場合であっても、出勤して事業場施設内にいる限り、労働契約に基づき事業主の支配管理下にあるといえます。しかし、実際に業務をしていないので、この時間に私的な行為によって発生した災害は業務上の災害とは認められません。
ただし、以下のような場合には、業務に従事していなくとも業務上の災害と認められることがあります。
①事業主の支配下で業務に付随する行為として取り扱われる行為
たとえば、トイレや水分補給のために作業を一時的に中断して本来の業務から離れる場合です。このような行為は、作業そのものではないですが、生理的必要により一時的に作業を中断したにすぎませんので、業務に付随する行為とみることができます。
また、始業前の行為、機械器具類の点検、整備などの準備行為、作業終了後の機械器具類の点検、収納、清掃、労働者自身の手洗い、更衣などの後始末行為は、本来の作業に付随する必要かつ合理的な行為です。
したがって、このときに発生した災害は、就業中の災害と同様に業務災害として認められない場合を除いて業務上の災害となり得ます。
②事業場の施設・設備や管理状況等が原因で発生した災害
業務上の災害と認められたケースとして、以下のようなものがあります。
・夕食のために作業を中断し、トロッコレールの内側を弁当を取るため更衣室に向かって歩いているときに、蝮に咬まれて負傷した例
・オートバイで工場に出勤し、タイムカードを打刻した後再びオートバイで駐輪場に向かって直進していたところ、同工場の製品を台車に積載して倉庫にけん引途中のフォークリフトの側面に衝突して負傷した例
・火力発電所の工場労働者が、就業後引き継ぎを終え、退勤するため工場内の細道を徒歩で歩いていたところ、柵のない泥砂地に転落して溺死した例
なお、事業場施設または管理の欠陥に起因することが認められても、当該労働者の行為が業務に付随するものではなく、単純にその施設を利用しているにすぎない場合には、業務上の災害とは認められません。