今回も前回に引き続いて、地震にからんだ問題を取り上げてみたいと思います。
(前回の記事はこちら:地震でリース物件が壊れてしまったとき)
地震や火災で借家が滅失した場合、賃貸借契約の目的物が滅失し、その効用を失った場合には、賃貸借契約は当然に終了するとされています。この場合には、家主が明渡しを求める際に立退料を支払わねばならないということはありません。
滅失とは、賃貸借の目的となっている主要な部分が消滅して、全体としてその効用を失い、賃貸借契約の趣旨が達成できない程度に達している場合のことをいいます。その判断には、築年数、罹災したままで雨風をしのげるか、倒壊の危険はないか、火災保険協会の判定、修復する費用と新築する費用を建物の耐用年数を考慮したうえで比較してどちらが経済的か、消失した部分の修復が通常の費用では不可能と認められるか、などが考慮されます。
建物が地震や火災で破損したけれども、上述のように滅失したとまではいえない場合、借家関係は存続します。そのような場合、今度は、解約ができるか否かという問題になります。
建物は滅失したとまではいえず、修繕すればいまだ使用可能と思われるけれども修繕に多額の費用がかかるという場合、家主の立場からすれば、修繕するよりも、この機会に出て行ってほしいと思うことも多いと思います。
建物が滅失したとまではいえないにしても、老朽化した建物が損壊し、その修復に相当高額の費用が必要で、家賃も安かったというような場合には、家主が解約を求める正当事由があるとされる場合があります。
しかし、損壊したというだけでは、解約の正当事由がないと判断されるリスクがあり、このような場合に正当事由を補強する要素として、立退料を支払ったときには、家主からの解約が認められるという場合も考えられます。
このように、解約が認められるか否かはケースバイケースと言わざるを得ません。そのため、まずは賃借人と話合う必要があると思われます。
ところで、賃貸借契約のなかには、「地震などの不可抗力により居住不能になったときは敷金は返還しない。」という特約があることがありますが、このような特約は有効なのでしょうか?
敷引特約の効力に関する事例ですが、大規模災害による建物滅失により賃貸借契約が終了した場合に、敷引特約の有効性を否定した判例があります。
そのため、当事者が予期しない不可抗力により建物が滅失した場合にも、敷金を返還しないという特約は、無効とされるリスクが高いのではないかと思います。