今回は、前回に続き、震災に関する労働関係の法的問題として、計画停電に伴う休業について書こうと思います。
(前回の記事はこちら:震災に関する労働関係の法的問題)
東電の発表によれば、電力の需給バランスが維持できる見通しが立ったため、今後は、計画停電を原則として実施しない方針としたそうですが、今年の夏が猛暑であれば、やむを得ず計画停電が実施される可能性もあると思われます。
では、地震に伴う計画停電の際に、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて1日全部を休業とした場合、労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるのでしょうか。
これについては、計画停電の時間帯とそれ以外の時間帯を分けて考える必要があります。
① 計画停電の時間帯
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当を支払いなさい」ということが定められています。使用者の都合で休業しているのだから、その分の保障はして下さい、ということです。では、地震に伴って実施される計画停電の場合はどうかというと、これは会社の都合と関係なく行われるものですので、計画停電の時間帯を休業とすることは、原則として、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にはあたらず、休業手当を支払う必要はないと考えられます。
② 計画停電の時間帯以外の時間帯
この場合は営業しようと思えばできるのですから、休業するのは会社の都合ということになり、原則として労働基準法第26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えられます。但し、この場合でも、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められる場合であれば、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ではない、と言える余地はあるでしょう。
さらに、従来、労働契約や労働協約、就業規則、労使慣行に基づき、使用者の責に帰すべき休業だけではなく、天災地変等の不可抗力による休業について、休業中の時間につい賃金、手当等を支払うこととしている会社が、計画停電に伴う休業について、休業中の時間についての賃金、手当等を支払わないとすることについては別途の考慮が必要です。この場合、労働条件の不利益変更に該当するため、労働者との合意等、労働契約や労働協約、就業規則等のそれぞれについての適法な変更手続をとらずに、賃金、手当等の取扱いを変更し、支払わないとすることはできません。
なお、上記の地震に伴う休業に関する取扱いを含む労働基準法等に関するQ&Aについては、厚生労働省のホームページ「平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第2版)」に掲載されていますので、ご興味のある方はご一読下さい。
弁護士 堀真知子