こんにちは。
 今回は引き続き、労働者派遣法の改正についてお話しさせていただきます。

 今回のテーマは、派遣労働者の待遇向上についてです。
 派遣労働者の待遇向上については、①無期雇用への転換措置、②均等待遇の確保、③待遇に関する説明義務、④派遣契約の解除と雇用の確保、⑤無期雇用労働者か否かの通知義務、⑥派遣料金額の明示義務の6点が改正されています。
 今回は前編として、①から③について説明したいと思います。

① 無期雇用への転換措置(派遣法30条)

 派遣労働者の待遇向上の一つ目としてまず挙げられるのは、派遣元に対し、無期雇用を希望する「有期雇用労働者等」について、有期雇用から無期雇用への転換措置を努力義務化したことです。

 有期雇用が多い派遣労働者の地位の安定や就業先の確保の必要性に鑑みて新設された規定であり、派遣元はこのような措置を採るよう努めなければなりません。

 対象となる「有期雇用派遣労働者等」としては、派遣元における雇用期間が通算1年以上の派遣労働者又は、通算1年以上の派遣労働者として雇用しようとする労働者です(派遣法省令25条)。後者についてはややわかりにくいため、具体例として説明すると、登録型派遣において、登録中の労働者を派遣労働者として実際に雇用しようとする場合等が考えられます。

 そして、転換推進措置としては、(1)無期雇用の「機会」の提供、(2)「紹介予定派遣」の対象とすること、(3)無期雇用転換のための「教育訓練」等の実施のいずれかを採用するよう努めなければなりません。

② 均等待遇の確保(派遣法30条の2、40条3項)

 派遣労働者の待遇向上の二つ目としては、派遣先労働者との均等待遇の確保に関する規定の新設です。

 派遣労働者の実態として、派遣先の労働者と同様の仕事内容をしていても、賃金をはじめとした待遇において格差が生じていたことから、派遣元企業において、派遣先と均等な待遇を配慮する義務が新設されました(派遣法30条の2)。

 均等待遇にあたって考慮しなければならない要素は、賃金決定のみならず、教育訓練・福利厚生の実施その他派遣労働者の円滑な派遣就業の確保にも及びます。

 そして、賃金決定において考慮すべき要素としては、(1)同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水準、(2)同種の業務に従事する世間一般の労働者の賃金水準、(3)派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験等があります。

 また、以上の派遣元企業の配慮義務を補うために、派遣先企業に対して、賃金水準や福利厚生・教育訓練の実施状況に関する情報を、派遣元企業へ提供する等の協力の努力義務が課されることになりました(派遣法40条3項)。

③ 待遇に関する説明義務(派遣法31条の2)

 派遣労働者の待遇向上の3つ目としては、派遣元に対し、派遣労働者として雇用しようとする者に対する、賃金の額の見込みその他の当該労働者に関する事項を説明する義務を課す規定の新設です。

 説明しなければならないのは、賃金の額の見込み等以外には、事業運営に関する事項、労働者派遣に関する制度の概要とされています(派遣法施行規則25条の2第2項)。賃金の額の見込み等については、一定の幅があってもよく、その他の福利厚生については、説明可能な範囲でよいとされています。

弁護士 中村 圭佑