今回は、独占禁止法の「不公正な取引方法」の類型の1つである「抱き合せ販売」についてお話したいと思います。
独占禁止法は、ある商品(主たる商品)の販売にあたり、他の商品(従たる商品)を不当に抱き合わせ、従たる商品の購入を強制することを、「抱き合わせ販売」として禁止しています。
抱き合わせ販売の形を取ることに正当な理由が認められず、独占禁止法の観点から「不当に」と認められる場合に限って、取り締まられることとなります。
たとえば、2つの別個の商品を組み合わせて1つの商品として販売する場合には、不当とはいえませんので、抱き合わせになりません。旅行用のシャンプーとコンディショナーのミニセットなんかを考えてみてください。
2つの商品の組み合わせが1つの商品といえるかどうかは、組み合わせによって内容・機能が実質的に変わっているか、通常1つの商品として販売されているか等を考慮して判断されます。
抱き合わせ販売が違法とされる理由については、2つのタイプがあります。
1つは、不必要な商品の購入を強要させるタイプで、消費者の商品選択の自主性を害する点が競争手段として不公正であるため、違法とされます。
もう1つは、主たる商品の市場で有力な事業者が行って、従たる商品の市場の自由競争が害されることを重視して違法とされるタイプです。
前者の典型例として有名な事件に、人気ゲームソフトに売れ残りのゲームソフトを抱き合わせて販売したとされた事件があります。
この事件は、ゲームソフトの二次卸売業者が、人気ソフトであるドラゴンクエストⅣ(主たる商品)の絶対量が不足していたことから、小売店に対して、売れ残りの在庫商品(従たる商品)を抱き合わせて販売したというものです。
また、後者の代表的なケースとして、日本法人のマイクロソフトがパソコンメーカーに対し、エクセル(主たる商品)のみをパソコンに搭載する権利の許諾を拒み、エクセルとワード(従たる商品)を併せて搭載する権利として許諾したことについて、抱き合わせ販売に当たるとされました。
この事件では、主たる商品であるエクセルが表計算ソフトとして人気が高く、市場シェア1位であったところ、従たる商品であるワードと抱き合わせ販売されることにより、従たる商品のワープロソフト市場で、それまでシェア1位であった一太郎のシェアが低下し、ワードが1位となったことが認定されました。
顧客はエクセルとの抱き合わせによってワードの購入を強制され、ライバルの一太郎は製品の優劣を顧客の選択に委ねる機会を奪われたことから、従たる商品であるワードのワープロソフト市場で、競争減殺のおそれが認められました。
上記のように見てくると、抱き合わせ販売は身近でたくさん行われているような気がしてきますよね。