今回は、独占禁止法の「不公正な取引方法」の類型の1つである「不当廉売」についてお話したいと思います。

 安売りは、多くの場合消費者にとって利益になると思われます。しかし、不当な低価格で競争者を駆逐したり、新規参入を妨げたり、安売りが反競争的に利用されることもあり、そのような安売りは、「不当廉売」として、独禁法上取り締まりの対象となります。

 どのような安売りが不当なのかについては、採算を度外視した価格であることが指摘されます。
 これは、採算が取れない価格が問題だというわけではありません。企業が企業努力によって低価格を達成したり、効率的な経営をして低価格戦略を取ったりしたときに、それによって他の事業者が市場から撤退せざるを得なくなったとしても、不当とは評価されません。
 競争者を市場から排除する等の反競争効果の結果としてしか、その安売りが事業者に利益をもたらさないような場合に、不当な廉価であるということになります。

 不当な廉価を具体的にいうと、「その供給に要する費用を著しく下回る対価」ということになるのですが、これは、通常の小売業では、仕入価格を下回るような価格をいうと考えられています。

 このように申し上げると、バーゲンや閉店間際のタイムセール、見切品の安売りや新規開店セール、新商品の低価格でのプロモーションなども違法なのかと疑問を持たれるかもしれません。
 しかし、不当廉売では、不当な低価格での販売を継続的に行うことも要件とされ、また、仕入価格や原価を下回る安売りがある程度継続されても、その安売りに「正当な理由」があれば不当廉売は成立しないとされています。
 そのため、過剰在庫・不良品の処分、きず物・はんぱ物、季節外品、流行遅れの品の処分、生鮮食品など売れ残ると廃棄するしかないような商品の処分など、経済上の合理性が認められる場合や、事業の開始、新製品の開発、新規開店など、市場への新規参入、又は年末バーゲンセールのように、正常な商慣習の範囲内といえるような行為には、不当廉売は成立しません。