今回は、特許法の「発明者」について、少しお話したいと思います。
特許法は発明を保護する法律といえます。もっとも、特許法上の保護を受けるためには、「発明」の要件を満たすことが必要ですが、今回はその点は置いておきます。
発明をした自然人を「発明者」といいます。会社は自然人でないので、発明者にはなれません。この発明者(またはその承継人)のみが特許を受けることができます。特許を受ける権利がない人が出願しても、特許は受けられませんし、仮に受けても無効とされてしまいます。
発明者は、発明と同時に、発明者権(=特許を受ける権利+発明者人格権)を取得するとされています。
このうち、特許を受ける権利は、財産権であり、譲渡することが可能です。法人である会社も、特許を受ける権利を譲り受け、承継人となり、特許を出願することができます。
これに対し、発明者人格権は、人格権であるため、譲渡することができません。この発明者人格権は、特許法には明文の規定がありませんが、パリ条約4条の3は「発明者は、特許証に発明者として記載される権利を有する。」と規定しており、日本でも認められると考えられます。
この発明者人格権を根拠に、特許出願手続中のものについて、願書に発明者として真実の発明者の氏名が記載されなかったケースで、願書における発明者の記載の補正手続請求を認めた裁判例があります(大阪地裁平成14年5月23日判決)。
上記裁判例は、特許法上の諸規定について、上記発明者人格権を具体化した規定であると理解できるとして、発明者人格権が侵害された場合には、真の発明者は、侵害の差止めを求めることができると判断しました。
しかし、特許出願手続において、発明者の記載が不実であっても、拒絶理由や無効理由には直ちには当たらないことにかんがみると、発明者人格権が、それが侵害された場合に差止請求を認められるほど、具体的な権利であるか否かは、なお検討の余地があるように思います。