前回の記事はこちら:不動産投資入門6(滞納賃料と債権回収)
5.賃貸借契約の終了
(1) 期間満了
賃貸借の契約期間が満了しても、普通の借家契約においては、前述したとおり、法定更新という制度があります。賃借人が契約の更新を希望し、かつ、更新後の契約条件について協議が整わないときには、同一の契約条件で賃貸借契約は更新されることになります(但し、定期借家契約は、約定の期間満了で賃貸借契約は終了します)。
賃借人が真面目に賃料を支払ってくれて、かつ、近隣ともトラブルを起こさない人であれば、更新はむしろ賃貸人であるみなさんにとっては歓迎すべきことです。退去されてしまうと空室となってしまい、その間、賃料収益が途絶えてしまうばかりか、新たな賃借人を探すのに余計な時間と費用がかかってしまいます。したがって、法定更新という制度は、賃借人保護のための制度とはいえ、必ずしもみなさんにとってマイナス面ばかりではありません。
しかし、この制度がみなさんの足かせになってしまう場合があります。賃貸後に不動産市況が好況となり、また固定資産税が増税されるなどしたために、賃料の増額を賃借人にお願いしたい場合です。もし、現在の賃借人が退去してくれれば、賃料相場が上がっているわけですから、より高い賃料でも新たな賃借人を見つけることは可能です。ところが、賃借人が賃料の増額にも応じず、かつ退去もしてくれない場合、法定更新によって従前と同様の契約条件で契約が更新されてしまいます。これに対する打ち手としては、賃料増額請求の訴訟を起こすしかありません。時間だけでなく費用もけっこうかかります。弁護士費用のほか、不動産鑑定士に鑑定をお願いする費用もかかるからです。
このような事態に遭遇するとあまり有効な打ち手がないということは、不動産投資をするうえで知っておいてもらいたいところです。
なお、賃借人が死亡した場合、使用貸借契約とは異なり、賃借権は相続されます[23]。
[23] なお、内縁の配偶者・事実上の養子が同居していた場合や、相続人により賃借権が濫用された場合について、内田貴著「民法Ⅱ〔第2版〕債権各論」233頁以下参照。