こんにちは。
 我々の事務所では、賃料不払いを理由とする建物の明渡請求の依頼を多く頂いているのですが、それ以外の理由でどんな場合に賃貸借契約の解除が認められるのかについて、今日はお話したいと思います。

 マンション、アパートに関するトラブルとして、近隣トラブルというのもよくあると思います。
 賃貸人としては、悪臭、騒音を発するなど、他人に迷惑をかける行為ばかりする賃借人とは賃貸借契約を続けたくないと思うでしょう。
 そんなとき、賃借人の迷惑行為を理由に、賃貸借契約を解除することができるのでしょうか。

 東京地裁平成10年5月12日判決によれば、

「賃借人の迷惑行為等の程度が著しく、あるいは、賃借人の迷惑行為等が建物内の共同生活の秩序を乱すものと認められ、これにより賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されるに至っている場合には、賃貸人は、何らの催告を要せずして、賃貸借契約を解除することができる」

として、一般的な判断基準を示しています。

 上記裁判例によれば、賃借人が迷惑行為をしても、直ちに賃貸借契約を解除できるわけではないことになります。上記裁判例も、そのような事実が認められないのに、両隣が騒がしくうるさいなどと両隣の住人や管理会社に執拗に抗議を重ね、嫌がらせを繰り返し、両隣の住人を追い出してしまったという事案です。
 これ以外の裁判例も、騒音などの迷惑行為が受忍限度を超えている場合で、賃貸人からの再三の注意、警告にも関わらず、改善がみられない場合に、初めて信頼関係の破壊を認めています。

 したがって、近隣トラブルを理由に賃貸借契約を解除したい場合には、まず、騒音等の近隣トラブルの事実を確認し、賃借人に対して、複数回注意、警告をして改善を求め、それでも迷惑行為がやまない場合に賃貸借契約を解除するということになると思います。

 賃貸人としては、まず、近隣トラブルの内容が共同生活をしていく上で、通常がまんすべき限度(受忍限度)を超えたものであるか確認し、賃借人に対して注意、警告をするとこから始めなくてはなりません。