こんにちは。
前回、分譲マンションの管理費滞納者について、管理経費不払いの事実を掲示板等に掲示・公表して支払を促すことは、第三者に管理費滞納の事実が知れ渡ってしまい、区分所有者の名誉やプライバシーを侵害するおそれがあることから、少なくとも管理組合に関係のない第三者に明らかになってしまう方法では、避けるべきであると考えられることをお話しました。
その後、では、管理費を支払っていない人の名前を管理組合の総会で出すことも名誉毀損になってしまうのか、というご質問を頂きましたので、この点に関する裁判例をご紹介したいと思います。
広島高裁平成15年1月22日判決は、以下のように判示して、不払者の氏名を総会で明らかにして議題に取り上げても、名誉毀損にはならないとしました。
「管理費の滞納自体は、管理組合として容易には受け入れ難い事態であることは明らかであり・・・管理組合の理事長および理事らが、・・・この問題に対する対処方法を組合員に諮るべく、総会の議案に取り上げ提案したことは、管理組合理事として正当な職務行為といえる。よって、このことをもって原告の名誉を棄損する違法行為ということはできない」
実際、不払者の氏名を明らかにしなければ、具体的にどう対応していくか、理事会で検討して決議することはできないでしょうから、もっともな判断であると思います。
それから、もう1点、管理費を滞納したまま、区分所有者が専有部分を売買などで譲渡した場合、譲り受けた人は、譲渡した人に管理経費の未払があることを知らなかったとしても、滞納管理経費を支払わなければならないのは本当か、というご質問を頂きました。
分譲マンションなどの区分所有建物の専有部分が譲渡された場合、譲り受けた人は、譲渡人の管理経費支払義務を引き継ぎますので(区分所有法8条)、管理費滞納があればその責任を引き継ぎます。
確かに、管理費滞納を知らずに専有部分を譲り受けてしまった人に、滞納管理費の支払いを引き継がせるのは、酷なようにも思われます。
しかし、管理経費は、区分所有者全員の利益のために必要な費用であり、専有部分を譲り受けた人もその恩恵にあずかっているといえることや、宅建業者が中古マンション売買を代理、媒介する際には、未払いの管理経費があれば重要事項として説明しなければならないとされていることから、不当とまではいえない、と考えられています。