前回は、①免責条項の無効と②解除にともなう損害賠償の予定条項の無効の一部についてお話しました。
今回は、解除にともなう損害賠償の予定条項の無効のうち、「平均的な損害」を超えるとはどういう意味か、③不利益条項の無効について、お話したいと思います。
平均的な損害とは
解除にともなう損害賠償の予定として典型的な例は、キャンセル料の定めが挙げられると思います。
例えば、ホテル等の宿泊施設を予約したものの、直前に出かけられなくなりキャンセルした場合や、旅行を予定していたところ、急な予定で行けなくなりキャンセルした場合等にキャンセル料(例えば、1日前であれば50%、当日であれば100%等)が発生することが定められていることは多いと思います。
こういった解除にともなう損害賠償の予定は、「平均的な損害」を超えている場合は無効となるおそれがあります。
そこで、「平均的な損害」とはどういった意味か問題となります。
裁判例の中には、
「当該消費者契約の当事者たる個々の事業主に生じる損害の額について、契約の類型ごとに合理的な算出根拠に基づき算定された平均値であり、解除の事由、時期の他、当該契約の特殊性、逸失利益・準備費用・利益率等損害の内容、契約の代替可能性・変更ないし転用可能性等の損害の生じる蓋然性等の事情に照らし、判断するのが相当」
である旨述べるものがあります。
解除された時期によっては、他の顧客を見つけることができる場合も多く、その場合には、事業者に損害は発生しないと思われます。
そこで、直前のキャンセルに限り、50%等の範囲に限定して損害賠償を予定して定める例が多いのだろうと思います。
しかし、キャンセル料が発生する時期さえ限定すれば良いとは限らず、場合によっては、損害賠償の予定の範囲が合理的な算出根拠に基づいておらず高額すぎる場合は無効と判断される可能性もないとはいえません。
損害賠償の予定の定めがある場合でも、他の顧客が見つかった場合や、事前にキャンセルの可能性を知らされており、準備等に費用をかけていなかった場合などには、請求を避ける方がいい場合もあるかもしれません。
不利益条項の無効について
消費者契約法10条は、消費者の利益を一方的に害する定めを無効とする旨定めています。
例としては、敷金について、一律に返還額から控除する敷引き特約や、長期継続する契約について、消費者に中途解約を一切認めない定め、賃貸借契約における原状回復費用について消費者の負担を増加させるような契約、賃貸借契約更新の際の更新料請求の定め等が無効とされています。
同法10条は、消費者を一方的に害する定めを無効としていますが、その判断は総合的なものであり、上記の例も具体的な事案に則して判断されたものであり、常に無効とされるとは限りません。
しかし、対価性のない負担又は対価性が明らかではない負担を消費者にさせるような定めは、無効とされる傾向があるように思われます。
したがって、消費者との契約において、金銭の負担を求める場合には、少なくともその対価性を明らかにしておく必要があるのではないかと思われます。