こんにちは。弁護士の吉成です。

 今回は、債権管理の一環として、時効管理についてお話しします。

 まず、前提として、時効には、取得時効と消滅時効の2種類のものがありますが、債権管理で問題になるのは消滅時効です。

 消滅時効とは、一定期間権利を行使しないと権利が消滅するというものです。

 この消滅時効という制度があることから、債権があっても、請求するのを忘れていたり、あるいは相手が支払うのを気長に待っていたりして、一定期間が経過してしまうと債権の行使ができなくなる可能性があります。

 では、一定期間とはどれぐらいの期間なのでしょうか。

 これは、債権の種類によって異なります。

 民法167条1項は、債権について、原則として10年で消滅時効にかかると規定していますが、これはあくまで原則であり、より短期の消滅時効にかかる債権もあります。

 一例を挙げますと、ホテルの宿泊料債権や料理店の飲食料債権などは1年、売掛金債権などは2年、不法行為に基づく損害賠償請求権や工事請負代金債権などは3年、利息債権、商事債権、賃料債権などは5年で時効にかかります。

 このように時効期間は債権の種類によって異なりますので、自社の有する債権がいつ時効にかかるのかを把握しておくことが重要です。

 なお、時効期間の起算日は、権利を行使できるときです。

 例えば、契約日が平成21年4月1日で、支払日が平成22年4月1日の契約の場合は、権利行使できるのが平成22年4月1日なので、起算日は平成22年4月1日になります。

 ところで、消滅時効には、中断という制度があります。

 これは、時効期間満了前に、①請求、②差押・仮差押え・仮処分、③承認という事情がある場合に、時効期間が振出しに戻るというものです。

 たとえば、2年で時効にかかる売掛金債権について、支払期限から1年たった日に債務者が債務を承認した場合、それまでの1年がゼロになり、承認の翌日から2年間経過しないと消滅時効にかからないことになります。

 この意味での中断は、一般的な中断という言葉のイメージとは若干異なるところだと思います。

 ここで、①請求は、裁判所が関与する形での請求のことであり、訴えの提起、支払督促、調停の申立等がこれに当たります。

 逆に、裁判外で直接相手に請求書を送ったりしただけでは、中断しませんので、注意してください。

 ただし、時効完成直前の時期に、裁判外の請求をすれば、それから6ヶ月は時効期間が経過しても裁判上の請求することが可能になります。

 また、②差押え等も、裁判所に申し立てて行う手続となります。

 一方で、③承認は、債務者が債権者に対して債権の存在を知っていることを表示することですが、これについては、裁判上で行われる必要がありません。

 そして、債務者が「もう少し待ってくれ。」と述べたり、一部でも返済したりした場合でも、債務者が債権者に対して債権の存在を知っていることを表示したことになりますので、時効が中断します。

 したがって、話合い等において、こうした形で債務者から承認を引き出すことが、時効中断の最も簡便な手段といえます。

以上

弁護士 吉成安友