こんにちは。
 今日は、再生手続についてお話したいと思います。

 再生手続は、債務の一部を免除してもらい債務者が再生を図る手続です。
 再生手続における債権には、

① 再生債権(再生手続開始前の原因に基づいて生じた請求権であって、②共益債権にも③一般優先債権にも当たらないもの)
→再生手続によらなければ満足を受けられない

② 共益債権(再生手続を遂行するために必要な費用)
→再生手続によらず、いつでも弁済が受けられる

③ 一般優先債権(一般の先取特権など一般の優先権がある債権)
→再生手続によらず、いつでも弁済が受けられる

④ 開始後債権(再生手続開始後の原因に基づいて生じた債権で、共益債権、一般優先債権、再生債権に該当しないもの)
→再生手続が終了した後等でなければ弁済を受けられない

があり、再生手続によって満足を受けるのは、主に再生債権です。
 再生債権者は、債権届出期間内に届出をし、どのくらい債務を免除してもらえるかや期限の猶予などの基本的事項を定めた再生計画に従って、権利が変更された上で満足を受けることになります。

 この再生計画が成立するためには、再生債権者の決議によって可決されることが必要であり、その後裁判所の認可によって効力が生じます。
 再生計画が認可されると、再生債務者は、原則として再生計画に定められた権利についてだけ責任を負い、届出もなく、かつ、自認もされない再生債権については責任を免れることになります。

 上述のように、再生債権者が再生手続に参加するためには、債権届出期間内に届出をすることが必要です。
 再生債権者が債権届出期間内に届出をすることができなかった場合でも、届出の追完ができる場合もあります。ただし、再生計画の認可決定がされた後は、この追完はできなくなってしまいます。
 では、債権計画の認可決定がされた後は、再生債権者は一切弁済を受けられないのでしょうか。

a 再生債権者の責めに帰することができない事由により届出をすることができなかった場合(民事再生法181条1項1号)

 この場合の「責めに帰することのできない事由」は、たとえば、不法行為に基づく損害賠償請求権などで、原因である事由は再生手続開始決定前に生じていたけれども、具体的な損害が発生したのは再生計画が認可された後であった場合のように、権利の性質上期間内の届出が期待できなかった事案を想定しているといわれます(「新注釈民事再生法(下)」120頁〔馬杉榮一〕)。

 一種の事例判決として参考になると思われるものとして、再生債権である退職金請求権について、再生債権の届出がなく再生計画の認可決定までされた事案で、民事再生法181条1項1号の適用を認めた裁判例(東京地裁平成16年3月24日判決(判タ1160号292頁))があります。

   

b 再生債務者が債権を知っているのに自認しなかった場合(民事再生法181条1項3号)

 再生手続では、再生債権者が届出をしなかった場合でも、再生債務者がその債権を知っている場合には、再生債務者はこれを自認して再生計画に取り込むこととされています。
 再生債務者がその存在を知っているにも関わらず、届出がされない債権について自認しなかったために再生債権が失権してしまうのは衡平でないからです。

 上記a、bの債権は、再生計画に記載された場合と同じように、債務の一部を免除されたり、期限の猶予をされたりします。
 しかし、aの債権は再生計画に定められた再生債権と同時期に弁済がなされますが、bの債権は再生計画で定められた弁済期間が満了するか、他の再生債権者が弁済を受け終わった後に弁済を受けられるという違いがあります。