第1 企業再建の国際化

 現代社会においては、経済のグローバル化が進み、国際的取引を無視できず、企業再建の際も、各国別に行うだけでは十分とはいえない状況となっております。

 複数の国で事業展開している企業の場合、多国間にまたがる事業譲渡をすることで、有利な再建計画を立てることができたりする一方、国内に関してだけ債権者の公平が図られていても、海外への財産隠しや外国債権者への偏頗弁済を許しては、トータル的には不公正な手続を招来することになりかねません。

 そこで、近時は、企業再建においても、次第に国際間処理の重要性が増してきているのです。

 企業再建の国際化の問題は、大別すると2つに集約されます。1つは、国内再建・倒産法を整備することによる国内処理手続の対外的効果の問題です。もう1つは、「外国倒産処理手続の承認援助に関する法律」(外国倒産承認援助法)を適用することによる外国処理手続の対内的効果の問題です。

 このうち、今回は、前者の問題について触れてみましょう。

第2 国内処理手続の対外的効果の問題

1.内外人平等の原則

 国内処理手続の効力が、外国人にいかなる影響を及ぼすかについて、かつては相手国が日本人に自国民と同様の地位を与えている場合に限って、相手国の個人・法人に手続上同等の地位を認める相互主義が採られていました。

 しかし、このような法制は、多国籍企業における再建・清算の包括的処理に適さない側面がありました。

 そこで、現在は、外国人・外国法人に日本人・日本法人と同等の地位が与えられています(民事再生法3条、会社更生法3条、破産法3条)。

2.国際管轄

 いかなる場合に、日本で、再建・清算手続を行えるかについて、民事再生法4条、破産法4条は、債務者が法人の場合、国内に営業所、事務所、財産何れかがあればよいとしています。

 これに対し、会社更生法4条は、株式会社が日本国内に営業所を有する場合とし、財産に関する管轄を認めていないという違いがあります。

3.国内手続の効力の国外への拡張

 日本国内の処理手続の効力は、会社が外国で所有している財産に対しても及ぶことが明文化されました(民事再生法38条1項、会社更生法32条1項、破産法34条1項かっこ書)。

 もっとも、上述のことは、あくまで日本の法律はそのように扱うというにとどまり、その国の再建・清算法が日本の処理手続の効力につき、自国内にも及ぶことを承認していなければ、その国に対して対抗できないことになります。

4.ホッチポッドルール

 ホッチポッドルールとは、会社の国内処理手続開始後に、ある債権者がその会社が外国で所有する財産に対して権利行使したことにより弁済を受けた場合、当該債権者は、その国内処理手続において他の債権者がそれと同一の割合の弁済・配当を受けるまで、当該処理手続で弁済・配当を受けられないというルールです。

 現行法は、ホッチポッドルールを採用し、内外の債権者の平等を図ろうとしています(民事再生法89条2項、会社更生法137条2項、破産法201条4項)。

 このような債権者でも、弁済を受ける前の債権額をもって処理手続に参加できますが(民事再生法89条1項、会社更生法137条1項、破産法109条)、弁済を受けた債権の部分については議決権を行使できないとされています(民事再生法89条3項、会社更生法137条3項、破産法142条2項)。

5.国内管財人と外国管財人

 国内管財人は、外国管財人に対し、処理手続に関して必要な協力及び情報の提供を求めることができます。また、国内管財人は、外国管財人に対し、必要な協力及び情報の提供をする努力義務があるとされています(民事再生法207条、会社更生法242条、破産法245条)。

 なお、ある会社について外国処理手続がなされている場合、国内の再建・清算手続開始原因事実があるものと推定されています(民事再生法208条、会社更生法243条、破産法17条)。

 外国管財人には、国内における企業再建・清算手続の開始申立権、集会の出席・意見陳述権、計画案の作成・提出権等の重要な権限が認められています(民事再生法209条、会社更生法244条、破産法246条)。

 外国管財人は、外国処理手続に参加しているが国内処理手続の届出をしていない債権者を代理して国内処理手続に参加できます。他方、国内管財人は、届出債権者で外国処理手続に参加していない者を代理して外国処理手続に参加できます(民事再生法210条、会社更生法245条、破産法247条)。これらはクロス・リファレンスと呼ばれ、自国外手続への参加が困難である自国内の債権者の利益を擁護し、債権者平等を図るための制度です。