前回、倒産手続きにおいて将来債権を目的とする債権譲渡担保の効力について検討する前提として、国税の法定納期限等以前に将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡担保契約が設定され、かつ第三者に対する対抗要件が具備されていた場合において、国税徴収法24条8項の適用があるのか否かについての判例を紹介しました。

 今回は、この判例をふまえて、倒産手続きにおける集合債権譲渡担保契約の効力、特に、集合債権譲渡担保の対象となる債権のうち、倒産の開始決定後に新たに取得した債権にも譲渡担保の効力が及ぶかという問題について検討します。

 集合債権譲渡担保の効力が倒産手続きの開始決定後に取得した債権にも及ぶのであれば、譲渡担保権者は別除権者として当該債権についても担保権を実行できることになります。しかし、効力が及ばないというのであれば、当該譲渡担保権者は倒産手続き開始決定後に債務者が取得した財産について担保権を実行できないということになります。

 この点、前回紹介した判例(最判平成19年2月15日民集61巻1号243頁)は、「将来発生すべき債権を目的とする譲渡担保契約が締結された場合には、債権譲渡の効果の発生を留保する特段の付款のない限り、譲渡担保の目的とされた債権は譲渡担保契約によって譲渡担保設定者から譲渡担保権者に確定的に譲渡されている」と判示しています。この集合債権譲渡担保の性質を重視すれば、倒産手続き開始決定後に発生する債権についても譲渡担保契約時に確定的に譲渡されているのであって、当該債権についても譲渡担保の効力が及ぶと考えられます。
 しかしながら、この判例は、国税の差押えと集合債権譲渡担保の効力が問題となった事例であり、倒産手続きが開始された場合の集合債権譲渡担保の効力については触れられていません。
 そこで、破産手続き及び会社更生手続きの場合には、財産の管理処分権が管財人に移転すること、及び、集合債権譲渡担保においては、担保権実行までは設定者に目的物の処分権限を認め、集合物である債権の具体的内容が変動することが予定されているところ、倒産手続き開始により設定者の処分権限を剥奪する以上、その時点で目的物の対象は設定者に帰属する債権に固定化されると考えられることから、開始決定後に債務者が取得する債権には担保の効力が及ばないとする見解もあります。そして、この見解は、債務者が手続き開始後も管理処分権を保持する再生手続の場合においても、手続き開始後の再生債務者は手続き開始前の再生債務者と同視すべきではなく、再生手続きの機関として業務を遂行し財産を管理処分するのであるから、同様に考えられるとしています。

 このように、この問題については、集合債権譲渡担保の効力が倒産開始決定後に取得した債権についても及ぶとする見解と及ばないとする見解の対立があり、判例によっても考えが固められていないため、今後の動向が期待されるところです。