こんにちは。

 最近、何かと企業の倒産が多いですよね。
 国から補助金を受けている学校や保育所等も例外ではなく、倒産することもあります。

 補助金(ここでは、補助金とは、国又は地方公共団体が公益目的で民間団体に交付するものを指すこととします。)は、あくまで補助目的で交付されるものであって、後発的事情の発生により補助事業等が補助行政目的どおり遂行されない場合には、補助金交付決定が取消されることもあります。補助金交付決定が取消されると、補助金を受けた学校等には、国に対して補助金を返還する義務が生じます。

 では、その返還義務を負った学校等が破産してしまったら、国の学校等に対する補助金返還請求権は、他の破産債権と同等の扱いを受けるのでしょうか。国が強制的に回収することができる債権なので、財団債権として扱われるのではないかとも思われます。財団債権とは、「破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権」(破産法2条7項)のことです。これには、例えば、租税債権等があります。

 この点について判断した以下のような判決があります。

名古屋高裁平成5年2月23日判決

[事案]

 国の機関Aが、福祉法人Bが経営していた保育園の園舎の改築工事費用の一部として、Bに対して補助金を交付し、Bは補助金を使って園舎を建築しました。補助金交付に際しては、補助金を使って建てた園舎に無断で交付の目的に反して担保を設定してはならないという条件が付されていました。ところが、Bは園舎に根抵当権を設定してしまいました。

 そこで、Aは、Bに対し、補助金交付の決定を取り消してその返還命令を発しました。

 しかし、返還命令がBに到達する前に、Bは破産手続開始決定を受けていました。

[判決]

 補助金返還請求権は、財団債権にあたる。

 本判決は、その理由として、「補助金返還請求権は、「国税滞納処分の例により徴収することができる債権」であるところ、「国税滞納処分の例により徴収することができる債権」(例えば、租税債権)は、破産法148条1項3号の財団債権に該当する。」旨判示しました。

 ただ、一般的に、財団債権に該当するには、破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた債権であることが当然の前提要件とされているので、破産手続開始決定後に補助金の返還命令が到達した本件においては、補助金返還請求権が破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた債権であるか否かが問題になりました。

 本判決は、この点について、

 「破産宣告(破産手続開始決定のこと。以下同。)前の原因に基づいて生じた債権であるというためには、請求権自体が破産宣告の当時すでに成立していることを要せず、その債権発生の基本となる法律関係が破産宣告前に生じていればよく、債権の成立に必要な事実の大部分が破産宣告前に具備されていれば足りる」

と判示し、本件においては、破産宣告直前にすでに補助目的が達成される可能性がほとんど消滅するに至っており、交付決定取り消しをすることもやむを得ない状態となっていたのであるから、遅くとも、破産宣告の直前においては、補助金返還請求権発生の基本となる法律関係が生じ、補助金返還請求権の成立に必要な事実の大部分が生じるに至っていたと判断されました。

 学校等に対する債権をお持ちの方は、補助金返還請求権が発生していないか、注意した方がよいかもしれませんね。

以上