第1 はじめに

 前回は、会社更生法に基づいて企業を再建する場合、どのような機関が設置され、それらが主にどういった役割を果たしていくのか等について説明しました。

 今回は、会社更生手続開始の申立に基づいて、裁判所が開始決定の判断を下すと、法的にはいかなる効果が生じるか等に関し、説明を加えていこうと思います。これらの効果について、法律の専門的知識はなくとも、ある程度、重要部分は押さえておかないと、会社更生法を適用させた再建を図るか否かの局面において、判断を誤ることになりかねません。

 それでは、以下に他の手続との違いにも着目しながら、お話ししていきます。

第2 開始決定の効果

1 更生会社に対する効果

 まず、更生会社が開始決定後に、会社財産に関し、何らかの法律行為(売買契約等)をしても、原則として、その効力を主張できません(会社更生法47条1項)。開始決定と同時に、更生会社の事業経営権、財産の管理・処分権は、管財人に専属することになるからです(同法72条1項)。

 また、更生債権者等が更生手続開始後に管財人又は更生会社の行為によらずして、会社に対する権利を取得しても、その効力を主張できません(同法55条1項)。

 他方、更生会社に対して債務を負っている者がなした弁済等は、その者が更生手続開始の事実を知らなかったときのみ、弁済等の効力を主張できるとされています(同法57条1項)。

 最低限の取引の安全は図られているわけです。

2 双務契約に対する効果

 双方未履行の双務契約の場合、管財人が契約の解除又は履行請求を選択できますが(同法61条1項)、いずれを選択するかの催告に対して、管財人が確かな回答をしない場合、解除権は放棄されたとみなされます(同条2項)。企業の維持・更生を目的とした手続だからです。この点は、再生手続も同様ですが(民事再生法49条2項)、破産手続とは異なります(破産法53条2項)。

 そして、ガス・電気等を継続的に給付する会社と更生会社との間の双務契約については、ガス・電力会社等は、更生手続開始申立前の給付に関する支払がないことを理由に、手続開始後の給付を拒めないことになっています(会社更生法62条1項)。こうしないと、開始決定前の未払が少しでもあると、開始決定後に会社を更生させていくのに不可欠なガス・電気・水等の供給が断絶されることとなり、目的達成は不可能となるからです。

3 他の手続に対する効果

(1) 訴訟手続

 更生会社財産に関する訴訟手続は、更生債権者による債権者代位訴訟や詐害行為取消訴訟を含めて中断します(同法52条1項、52条の2第1項)。

 そして、中断した訴訟手続は、管財人が当事者適格を有するため(同法74条1項)、更生債権等に関しない訴訟については管財人が受継できるとされています(同法52条2項、52条の2第2項)。他方、異議等が出されて更生債権等に関する訴訟が係属していた場合については、更生債権者等が異議者全員を相手どって受継していくことになります(同法156条1項)。

(2) 倒産手続

 破産・民事再生・会社更生・特別清算手続開始の各申立はできなくなり、既にされている破産・民事再生手続は中止され、特別清算手続は失効します(同法50条1項)。これは、前々回に触れた手続開始要件のところで、会社更生手続が、原則として、破産・再生・特別清算手続に優先する(同法41条1項)というお話をしましたが、そのこととリンクするわけです。

 なお、中止された破産・民事再生手続は、更生計画認可決定があったときに失効します(同法208条1項)。

(3) 強制執行等

 更生債権に基づく強制執行、仮差押、仮処分、担保権実行、留置権による競売、企業担保権の実行、財産開示の各申立はできなくなり、既にされている各手続は中止されます(同法50条1項)。

 また、更生会社財産に対する国税滞納処分は、更生手続開始決定から更生計画認可もしくは更生手続終了まで、又はそれらがなければ開始決定から1年間はできなくなり、既にされている処分は中止されます(同条2項)。

 なお、中止された強制執行等及び国税滞納処分は、管財人の申立又は裁判所の職権により続行されなければ、取消されるか(同条5項、6項)、強制執行等については更生計画認可決定があったとき失効します(同法208条1項)。租税債権の失効はなくとも、消滅時効にはかかります。ただ、処分をなしえない期間は時効が進行しないことになっています(同法50条10項)。

第3 補足

 これまで、会社更生法の手続は、管財人を中心に進められ、開始決定の効果として、会社の事業経営権・会社財産の管理処分権は管財人に専属することになると説明してきました。

 しかし、会社更生法上、もう一つ重要な特色があることを付言しておかなければなりません。それは、権限付与制度についてです。

 更生計画の定め又は裁判所の決定で、更生計画認可決定後には、事業経営権・財産管理処分権を更生会社の役員に戻すことができるとされているのです(同法72条4項)。かかる権限付与がなされた場合、管財人は、取締役等の経営・財産管理を監督する監督機関に回ることになります(同条項後段)。法が自社の建直しを、外部者ではなく、内部者の中から、経営手腕を期待できる者に任せて行うという途を残したのです。