1 成長フェーズにある家賃保証ビジネス

 景気の悪化に伴う家賃滞納の増加は家賃保証業界にとって深刻ですが、基本的に家賃保証のニーズは今後ますます増えていくと思います。
 そして、大手の管理会社では、外部の保証会社を利用せず、自社またはその関連企業を通して保証サービスを提供する流れが出てきています。

 もっとも、リーマンショックの影響で、不動産業界も未曾有の不景気に見舞われていることは周知のとおりだと思います。多額の滞納家賃が回収不能となり、破綻する保証会社も出てきました。
 基本的に、不動産業界は、景気変動に対する免疫がどちらかというと、弱い業界です。不動産業の延長線にある家賃保証も景気の影響から完全に逃れることはできません。
 そこで、いかにしてそのようなリスクを管理するかが今後の重要な課題になってくると思います。

2 審査と督促業務

 貸金業でもそうですが、儲かっている時には与信が甘くなります。バブルの時には、銀行も湯水のように貸し付けていたわけですよ。

 家賃保証も油断すると同じような構造に陥りがちです。バブルほどではないにしても、景気の良い時には、多少審査を甘くしてでも保証サービスを提供したほうが儲かるわけです。より多くの人が審査でパスするといういことは、より多くの人がお客さんになることを意味しますから…。
 しかし、ひとたび景気が悪化し、家賃滞納者が増えてくると、保証会社は督促業務に奔走せざるを得ない状況に追い込まれます。まあ、弁護士にとっては仕事が増えますけど(笑)。

 なので、審査と督促業務には密接な相関関係があると思います。審査が厳しければ厳しいほど、督促業務は減少します。他方、審査が甘ければそれだけ督促業務の負担が後々重くのしかかります。
 重要なのは、どこでバランスをとるかでしょう。後の不良債権化を恐れて審査を厳格にするのもひとつの解決策ですが、それだと好景気の時にビジネス・チャンスを逃してしまいます。ビジネスチャンスを活かすためには、ある程度の不良債権の発生は許容しておくべきでしょう。
 しかし、だからといって、不良債権リスクを無視して審査を形骸化してしまえば、後で痛い目に遭います。
 したがって、この両者のバランスをどうとっていくかで、保証会社の実力が問われることになると思います。

3 審査の新たな動き

 滞納家賃の増加に伴い、強引な督促業務も増加傾向にあり、ちょっとした社会問題になりつつあります。
 しかし、これは家賃保証業界全体にとって、必ずしもいいことではないですよね。この業界に対する政府の規制を強める結果になるだけです。
 建築物の耐震偽造事件がきっかけで建築基準法が改正され規制が強化されたことを思い出してください。あれで、建築業界はますます商売がやりにくくなったんです。

 したがって、これに対する有効な処方箋は、審査をもっと洗練されたものにする必要があります。いたずらに厳しくしてビジネスチャンスを逃すのではなく、将来滞納者になる可能性が非常に高い人たちを保証対象から上手に排除する方法です。
 以前このブログでも簡単に紹介しましたが、そのような動きとして注目されるのが、家賃滞納者のブラック・リストです。
 保証会社がこのブラック・リストを共有することによって、不良債権化する危険の非常に高い人たちを保証対象からはずすことができると思います。

 それでも発生してしまう家賃滞納に関しては、うまく弁護士などの専門家を活用してください。ブラックリストがあれば、最悪の顧客グループは排除されるはずです。ですから、残りの家賃滞納者については、弁護士の活用で十分ペイする回収率を実現できるのではないでしょうか…。